河合隼雄さんのエッセイ集である『こころの処方箋』の6番目のエッセイは「言いはじめたのなら話し合いを続けよう」です。そのなかで、河合さんは、アメリカ人の夫と日本人の妻との間に生じたある離婚事件を取り上げます。
「夫の友人で妻の嫌いなタイプの人が居た。家に遊びに来たときは我慢してつき合っていたが、とうとう辛抱できなくなって、あの友人は大嫌いだ、と夫に告げる。そこで妻は話を打ち切る。ところが、夫はまたその友人を連れて帰ってきた。あれほどはっきり「嫌いだ」と言ったにもかかわらず、連れて来るというのは、私の気持ちを無視している、私を愛していないということだ」、というのが妻の言い分のようです。
では夫はというと…
妻が自分の友人を嫌いなのはよくわかった。しかし、妻はただあんな人は大嫌いと言うだけで、話を打ち切ってしまい、それではどうするのか話し合おうとしない。妻が彼を嫌いでも、自分は彼を友人としてつき合いたいと思っている。それでは、その葛藤を解決するために、友人を連れてくる回数をもっと少なくしてくれ、とか、友人を連れてきてもいいが、そのとき自分は一緒に話し合ったりしない、とか、何らかの妥協点を見出すことができるはずである。それを、ただ自分の気持ちを言うだけで妥協点を見出すための努力を払おうとしないのは、妻の方こそ愛情がないのではないか、と言うのである。
さて、いかがでしょうか?
人間の感情としての「好き」「嫌い」は、何ともやっかいな「情動」ですね。河合さんは、米国文化にある「議論することが当たりまえ」、「表現することに価値を置く」文化と、日本の「議論し続けることに慣れていない」、「察することに価値を置く」文化がぶつかりあったとき、どのような経過をたどるのか… そのことをこの事例をもとに象徴化させていきます。
河合さんは、両者の捉え方について、単純にジャッジメントしていません。日本と米国の考えの違いについて、「どちらがいいなどとは言えたものではない。どちらにしろ、一長一短があり、どちらにしろ、それをやり抜くためには相当な努力を必要とするのである」、と指摘した上で…
このあたりのことがわからぬ人は、日本流は苦しくて駄目だからアメリカ流に変わろうとか、少しだけアメリカ流をやってみて、うまくゆかないと、やはり日本流が素晴らしいのだなどと言いはじめる。どちらにしろ、ひとつの考え方を維持するために支払わねばならぬ努力の質と量についての自覚がないかぎり、うまくはいかないのである。
両論併記ですね。ただ、ここでエッセイが終わってしまうと「?」が点滅しそうです。河合さんは「対話」の重要性を、この後でしっかり説いています。
コーチングにおいて、クライアントとコーチが深く「対話」を続けていくと、お互いに膨大なエネルギーがそこに費やされていることが実感されます。裏を返せば、そうではないコーチングセッション…例えば、クライアントの「コーチの言葉によって気づきをいただきました、ありがとうございます」と、あっさり言葉が返ってきたケース…の場合こそ、しっかりと振り返る必要があるということです。
しかし、それでもわれわれは日本流を引き摺っていて、例にあげた日本人妻のように、何かを言うことは最後通牒のように行い、実はそれが話しのはじまりであることに気がつかないことが多いのではなかろうか。黙っているのではなく、もし、ものを言いはじめたのなら、そこから困難な話し合いを続行していく覚悟が必要と思われる。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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