今回のキーワード解説から、河合隼雄さんの『<心理療法コレクションⅡ>カウンセリングの実際』を取り上げます。ただし、CBLコーチング情報局は、コーチングを解説していくことが目的ですから、カウンセリングを語るわけではありません。まずはそのことを理解のうえ、読み進めていただきたいと思います。
この本で、河合さんは早々に、「聴く」ことの意味を語り始めます。
クライエントの話に耳を傾けて聴くということは何を意味するのか、例をあげて示してみることにしましょう。たとえば、ある大学生が父親の悪口を散々述べたてる。たしかにその人の話を聴いているかぎりでは、父親の方に問題があるように思う。つまり、父親が頑固でなければ、この家はうまくゆくだろうと思える。そこで、われわれは、それが本当であるかどうかを父親に会ってたしかめたり、あるいは、父親を説得に行ったりはせず、まだそれでも話を聴こうとする。このように、本人の話にひたすら耳を傾けてゆこうとすることは、そうすることによって、本人さえ気づいていない新しい可能性が、その場に生まれてくるという確信によって裏づけられているのです。(9ページ)
この大学生は、さんざん父親を攻撃したあげく、しばらく沈黙します。そして「実はいろいろ悪口を言いましたが、今まで私の学費を出してくれているのも、お父さんなのです」と、言葉にします。この時点で河合さんは、学生が「気づきを得た」とは言っていません。わかっていながらその事実を心の片隅に追いやっている状況です。
カウンセラーが耳を傾けて、この人の言い分を聴こうとすると、さんざん父親を攻撃した後で、この心の片すみに追いやっていた事柄を取り上げずにおれなくなってくるのです。このため、クライエントは、頑固で分からずやの父親という面と、学資を出してくれている父親という面を、両方同時に取り上げて、その両面を総合するような新しい父親像を探り出していく努力をはらわねばならなくなってくるのです。(10ページ)
その後学生は帰省します。そしてまたやって来たとき、「あれほど言いましたけど、父はそれほど頑固ではない。いろいろ申し上げましたが、考えてみると父も話が分かるところもある」と口にします。
あとで父親に会ったとき、「この頃、息子が変わってきた。今まで言ったことがなかったのに<お父さん、ありがとう>、などと言い出した」と、フィーバックを受けます。
河合さんは、当初クライアントが想像していなかった、「新しい関係」の可能性について、次のように語ります。
ここで大切なことは、その可能性を発見していった主体がクライエント自身であって、カウンセラーの考えに従ってなされたのではないということです。先ほど、助言や忠告による援助の効果に対する疑問について述べましたが、クライエント自身が、自分でその可能性を探ってゆくとなれば、あくまで、その責任をもっている主体がクライエントにあるという点で、われわれは、その効果について、悩みが少なくなるものです。このように、われわれが聴く態度をもってカウンセリングをしていますと、今までなかった可能性がクライエントの心のなかから生じてくるといえます。(12ページ)
冒頭、「カウンセリングを語るわけではありません」と始めています。カウンセリングをあえて定義すると「対象者は精神的な病を抱えた人」となります。ただこの事例は、決して特殊ではなく、むしろ“普通の親子”が抱えるテーマとして、もっともメジャーといえそうです。
特に中小企業における父親である創業者と、その承継を託されている親子の間に横たわる「関係性」をいかに紐解いていくか、というケースにおいて、「傾聴」がいかに重要であるのかを、示唆してくれる事例となりそうですね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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