（河合）
……つまり、そのことを直接には表現できないので、この線を無限にたどればそこに行きつくというような、方向と運動を与えるような言葉の使い方はできないだろうか。そういう言語の使用法というのは全く違いますね。精神分析における言葉と。
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談を収めた『ブッダの夢』の第1章「仏教と癒し」の6番目の見出し「支柱を失った日本」（分量は5ページ）を取り上げてコーチングの解説を試みています。引用は、この見出しの最後あたりで、河合さんが目指そうとしている「言葉の用法」を中沢さんに告げるところです。
お二人の対話は、仏教思想の「極地」に触れようとしている…と、筆者は感じています。「難しい話をわかりやすく説明しよう」というコンセプトのもと、コーチングの解説を続けていますが、同書を選んだ以上、どこまでも付いて行こうという覚悟を固めて、書いています。
中沢さんは、河合さんのこの言葉を「唯識（ゆいしき）」につなげました。
（中沢）
先生は今、ほんとに唯識の思想に近づいている……。心の分析の究極に、たんなる「無」じゃなくて、「充実した空」を出現させようってわけですから。アビダルマは存在世界の分析を尽くすわけですね。存在世界の分析をやったって、仏教ですから、それは空には違いないわけですが、じゃあ、なんでアビダルマの思想家たちが、あんなに一生懸命やったのかというと、いま先生がおっしゃったことに関わっていますね。……
「唯識」ということばは、なんとなく聞いたことがあるかもしれませんね。生成AI（Copilot）は次のように説明しています。
唯識（ゆいしき）は、仏教の哲学的な概念で、特に日本や中国の仏教で重要視されています。「識（心の働き）だけが実在する」という教義を指します。これは、物質的な世界や現象はすべて心の投影であり、実在するのは識（意識）のみであるという考え方です。
「アビダルマ」については…
アビダルマの思想家とは、仏教の教えの一部であるアビダルマ（非常に微妙な教え）を体系化した人々を指します。アビダルマは、仏教の論理学的・哲学的な側面を強調し、特に中観派（マディヤマカ）の思想家たちによって発展しました。
中観（ちゅうがん）については、同書の最初で中沢さんが言葉にしています。非常に“微妙な教え”であるアビダルマとの関連が深いということですね。
河合さんは、言葉そのものが「ロジック」となって共有されている欧米の言葉の用法…これはフロイトの「精神分析」が嚆矢です…ではなく、日本語が孕んでいる「あいまい性」を生かしながらも、クライアントが「スッ」と「腹落ち」できる、言葉の用法をつくり出そうとしている。
中沢さんは、そのことを一瞬で受けとめ、「フィードバック」します。
河合さんは仏教思想に精通されていますから、「唯識」はもちろんのこと「アビダルマ」も理解されている。お二人の対話は、まさにコーチングですから、中沢さんは「チャンクダウン」で応えているのが伝わってきます。
続くお二人の対話を引用し（この見出しの最後のやりとり）、今回のコーチング解説を終えることにします。河合さんは、民族・文化を体現する言語空間でも「異質の調和」を目指しています。
（河合）
もし可能ならば、そういうことを英語で表現できるだろうかというのが僕の課題なんです。日本人だったら、なんとなくいま言ったような感覚を持っているからね、わからなくてもわかったように思ってくれるわけです。
（中沢）
一般の人たちは、仏教の理解に対して、河合先生の話を理解するような方向に欧米でも向かいつつあると思います。ただ長いことヨーロッパの仏教学というのは、その方向ではなかった。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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