河合隼雄さんの『大人の友情』の8話目は、「やさしさ」です。
筆者は「やさしさ」と聞くと、米国の小説家であるレイモンド・チャンドラーが生み出したフィリップ・マーロウ(私立探偵)の言葉である、「タフでなければ生きていけない。やさしくなれなければ生きる資格がない」を連想します。さて、河合さんは「やさしさ」をどのように描くのでしょうか。
友人の欠点や、時には悪事さえ知るかもしれない。それを肯定することはないが、非難する前に、まずそのようなことのある人間としての苦しみや悲しみの方に身を寄せる。その気持ちを共にした上で、それからのことを共に考える。外から見て、批判し、非難する以前に、内側に共に立って感情をわかちあう、やさしさが友情を支える。
文庫版4行で記述されたこのパラグラフには、「共に」が3回登場しています。河合さんは、「やさしさ」とは、「内側に立って感情をわかちあう」ことであり、それによって友情は支えられる、と言います。
河合さんは、このエッセイの半ばで、中国の故事である「刎頸の交わり」を引用し、1話目の「ユング派の分析家、アドルフ・グッゲンビュール」と重ね合わせています。
「刎頸の交わり」などと言うが、自分は相手のためなら命をも棄てるなどという友情は経験したことはない。「やさしさ」が友情を支えると言っても、前章で述べたように、グッゲンビュールの祖父が言ったというような、「夜中の十二時に、自動車のトランクに死体をいれて持ってきて、どうしようかと言ったとき、黙って話に乗る」ほどの「やさしさ」はもっていない、と言う人もあるだろう。というより、そんな人の方が多いだろう。平気で「刎頸の交わり」などと公衆の面前で呼び合うような人は、おそらく反省心欠乏症の人々なのではなかろうか。
人はともすれば、自分の思いや感情を、有名な「故事」や「格言」を用いて表現しますが、その本質を理解することなく、安易に使わないよう戒めることも必要ですね(笑)
グッゲンビュールの語りには、続きがあったようです。彼はエマーソンの言葉を引用し、「真実」と「やさしさ」を挙げた後に…
これらは、友情の行くえを照らす、二つの星だと述べている。つまり友情について考え、方向を示すために必要なものではあるが、人間は、そこに「到達する」ことなどないのである。
示唆を得た河合さんは、「やさしさ」は、あくまでも「行くえを照らす星」であり、このことを忘れ、到達目標や目的地と考えてしまうと、自分の友情について、あるいは友人に対して、怒ったり嘆いたりすることが増えてしまう…とつなげていきます。
このエッセイを読み進めるうちに、以前取り上げた、「フランクルのロゴセラピー」を思い出しました。その際、フランクルが描く「幸福」と「幸福感」について、次のようにコメントしています。
フランクルは、「幸福とは?」をパラドックスとしての文脈で、その「意味」に迫っていきます。「幸福感」は、幸福そのものを目標にすると逃げていくと言います。「幸福は追求され得ない。それは結果として生じるものでなければならない」とも言っています。
「やさしさ」そのものを目標にしてしまうと、友情が生み出す「やさしさ」に包まれる感覚が逃げていくのかもしれませんね。
このエッセイの最後の一行を引用して、今回の解説を終えることにします。
各人が自分の友情を照らす「星」を見つけられるといいと思う。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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