河合隼雄さんをCBLコーチング情報局で紹介するにあたって… その生涯において担われた役割は、ユング心理学をコアとしながらも、広汎なお仕事を通じて、日本国内、そして世界に「日本文化の本質」を伝えてこられた「偉大な語部（かたりべ）」としての姿でした…
とコメントするところから始めています。
その趣旨は、河合さんとは「オリジナリティあふれる日本文化の伝道者」であったことを伝えたかったからです。では、臨床心理学者としての河合さんを著名な人物に押し上げたのは何かというと…「箱庭療法を日本に初めて導入し、その効果を実証し、広めたこと」であると言われています。
ここで、「箱庭療法」の内容については特に触れませんが、最相葉月さんの『セラピスト』の中に、河合さんが「箱庭療法」をどう捉えているのかが理解できる一節があります。（206ページ～）
河合に訊ねたことがある。なぜそもそも河合はユング心理学を日本に持ち帰ったとき、ユング心理学を真正面から紹介するのではなく、まずは箱庭療法から始めたのか、箱庭療法が日本人に向いていると考えたのはなぜかと。山中自身が大学での臨床で箱庭療法の手ごたえを確信し始めた頃だ。河合はこう答えた。
「日本人というのは、言語化するのが苦手な民族なんや。それが得意な人が治療者としては精神分析を選ぶ。でもほとんどの人が得意じゃない。ところが、箱庭というのは一回見ただけで、クライエントの力量も治療者の力量もわかる。見ただけでわかるという直観力が優れているのは日本人全体の通性なんや。だからこれは使えると思った」
これに関連して、河合は次のようにも語っている。
「日本では自と他、物と心の区別があいまい。心の問題は人間関係全体の中に溶け込んでいると認識され『心』だけを取り上げることはなかった」（毎日新聞1993年1月26日付朝刊）日本人は西洋のように物と心を区別しなかったから、心だけを採り上げて言葉にすることはなかった。そのため、患者だけでなく治療者も、自分の心の内を言葉にするのが苦手である。だが、盆栽や盆景を好む日本人ならば、イメージで表現することはできるのではないか。箱庭ならば抵抗なく接することができ、心の内を託すことができるのではないか。河合はそう考え、ひたすら事例を積み重ねた。
経営理論や心理学理論、そしてコーチングなどは、欧米で生まれ、それが輸入され日本で広がっていくケースがほとんどです。
黒船によって太平の眠りを覚まされて以来、欧米の文物が洪水のように押し寄せてきたわけですが、今日に至るまで、どこか「辺境の島国である」ことのコンプレックスを抱えているように感じられます。もちろん「和魂洋才」は今も健在です。日本文化に合わせながら“上手に”取り込んでいるのも感じられるところです。
今回の解説で、ユング心理学と直接関係のない「箱庭療法」のことを取り上げたのは、河合さんが「ユング心理学」を真剣に学び、そのプロセスを経てしっかりと咀嚼し、「自分自身のユング心理学」を体内で確立できたからこそ、日本の導入に当たっては、ユング心理学をストレートに紹介することはしなかった、ということをお伝えしたかったからです。
コーチングは米国発です。コーチングを学び、日本に広めていこうとする私たちにとって、河合隼雄さんの人生を感じることがいかに大切であるか、改めて気づかされるところです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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