『大人の友情』の11番目のテーマ、「友情と贈りもの」の第4話のタイトルは、「ここだけの話」という秘密、です。「贈りもの」が人の心理にどのような影響を与えうるのか？ 河合さんは、「友情」という関係性に「贈りもの」が絡むと、そこに動態的変化が生まれることを語ります。
さて河合さんは、この最終話で、何を解き明かしてくれるのでしょうか。
成田善弘も前述の書物で論じているが、「秘密」も贈りものとして用いられやすい。直接的に経済価値に結びつく秘密もあるが、それとは関係なく、秘密を共有する関係とは、両者一体を意味することになるので、友情の証として「秘密」が語られることになる。
河合さんが『大人の友情』を書こう、と思った動機をいろいろ想像しています。全12のテーマで構成されたこのエッセイ集も、次の12番目のテーマを残すだけとなりました。筆者は、この11番目のテーマを締めくくる「秘密」という言葉に込めた、河合さんの“想い”を感じています。
一方、「秘密」は人間を個別化すための大切な要素である。親から自立していくとき、親に言えない何らかの秘密をもったことを記憶している人は多いだろう。したがって、友人と言っても、自立した個人と個人としてつきあうなら、お互いの間に「秘密」は存在することになる。友人を一個の人間として尊敬するのだったら、その人が自分に対して何らかの秘密をもつことを許すことができなければならない。
「親に言えない何らかの秘密をもったことを…」のくだりは、河合さんの言うように、多くの大人が記憶していると思います。それまで何でも親に話していたのに（まだ自我が発達していない幼少期から「思ったことを言えない親」のイメージが出来上がっていたとしたら、その子どもは、とても不幸な環境にある、ということは自明ですが…）、「秘密」をもったことで、親に対する「申し訳ない気持ち（負い目）」と、「大人になったような不可思議な感覚」が共存（アンビバレンス？）していたのではないでしょうか？
河合さんは、「秘密」を抱えることが自立につながっていく、と言います。「秘密」は、大人になっていくためのイニシエーションの一つなのかもしれませんね。
後半に、「ここだけの話」という、誰しもが口にしたことのある（だろう）「言葉」が、「この人こそ私の友人」と感じられるかどうかの「リトマス紙」の役割をもつことを、河合さんは「判りやすく」紐解いてくれます。
秘密は贈りものとして利用されやすい面ももっている。品物は贈りものとして相手に渡すと自分の手元に残らないが、秘密はそうではない。言うなればタダで友情を買えるわけである。そこで「ここだけの話」とか、「君にだけ言うのだけれど」という前置きをつけた話が、あんがい広く伝わってしまうことになる。その逆に秘密を秘密としてずっと保持してくれる人は、友人としての信頼が高くなるのも当然である。
「あなたにだけ言うのだけれど…」と、口に出てしまうのが“クセ”になっている人は要注意ですね（笑）
「河合さんがこの本を書こうと思った動機に思いを巡らせている」、とコメントしました。その動機を解明するヒントが、当該エッセイの最後のパラグラフに見出すことが出来そうです。生きていく上で“最も辛い体験”である「裏切り（を感じてしまう情況）」について、徹底的に考えてみよう、ということではなかったのか… と、筆者は想像しています。
そのような貴重なことを「贈りもの」などというのは怪しからぬという人もあるだろう。「もの」を贈って歓心を買おうなどと思ったのではなく、信頼関係のなかから自然に生まれてきたことなのだ。まさにそのとおりであるが、そこに贈りもの的側面があることも認識しておいた方がよさそうである。そのような面もしっかり見すえておくと、友人に裏切られたとか、あいつは信用ならない、などと怒り狂ってばかりいるようなことを避けられると思う。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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