河合隼雄さんは『＜心理療法コレクションⅣ＞心理療法序説』の中で、臨床心理学でオーソライズされている「母性原理」に加えて、日本神話からヒントを得た「中空構造」を、日本文化を説明するキーワードとして提唱しています。
西洋の近代自我に対して、日本人の自我の在り方について考えてきたことが関連して、日本人の心の在り方のモデルとして、日本神話からヒントを得て、「中空構造」ということを考えるようになった。（143ページ）
ロシアのウクライナ侵攻、そして米国内の分断… そこには自分たちの陣営を「至高至善」と考える「中心統合型」の価値観の影響が見出せるのではないでしょうか。河合さんは「中空均衡型」の特徴を次のように説明します。
中空均衡型の特徴を……わかり切っているだろうが……一応少しあげておく。中心が空であるため、それは善悪、正邪の判断を相対化する。そのため対立するものでも、全体的平衡を保つ限り共存できるのが特徴的である。中心統合型では、中心が絶対化され、それと相容れぬものは周辺部に追いやられるか、排除されてしまう。（144ページ）
CBLコーチング情報局では、コーチングを考えるうえで、「異質の調和」をコンセプトに、さまざまのキーワードを解説してきました。「中空均衡型」の特徴は、コーチングの本質に通じるものを感じることができます。ただし、河合さんの場合、「日本文化」を把握する巨視的なスケールとしての「中空構造」ですから、メリットとデメリットを併記します。
中心が空であるために、一時的にせよそのなかに何かを取り込むことが行われやすい。日本人が仏教、儒教などを取り入れてきたことにそれが示されているが、ただ、それは中心に定着せず徐々に全体の中に取り込まれて「日本化」し、中心は再び空になる、という傾向を持つ。あるいは、中心への他からの侵入を避けるために、中心に「無為」の人を長としていれて象徴的に「かついでおく」という形をとることもある。（145ページ）
河合さんの職業人のベースは「臨床心理学者」であり「実践家」です。ただ、このような提起に接すると、その存在は「思想家」としてのイメージに拡大していくようですね。
河合さんは、「中空構造」を解説する最後に、心理療法家としてのスタンスを踏まえ、次のように締めくります。
心理療法家としては、このような日本人の特性をよく心にとめておき……という自分も日本人なのだから……クライエントの人生、治療者とクライエントの関係などを常に考えている必要がある。西洋で育ったことを無批判に適用するのも誤りであるし、何でも日本人は日本人らしくなどと考えていたのでは、変化も進歩もないのである。（146ページ）
コーチングは米国発です。それが日本に輸入され、広がっています。上記河合さんのコメントの最初の「心理療法家としては、…」を「コーチングのコーチとしては、…」に、「治療者と…」を「コーチと…」に変えることで、今回の「コーチング・キーワード解説」の〆のメッセージとすることにします。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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