河合隼雄さんの『大人の友情』の15話目のタイトルは「一心同体の危険」です。これは、大きなテーマである「友人の出世を喜べるか」のなかに含まれるエッセイですが、「一心同体」という言葉について、河合さんは余程こだわりがあるのでしょう。「友人間の距離」というタイトルを付したエッセイ(7話目)でも、取り上げています。ちなみに筆者は、人間は「一心同体的」にはなれるが、いつも「一心同体」にはなれない、という表題を付して解説してみました。
15話目のこのエッセイは、シェイクスピアの有名な『ヴェニスの商人』のストーリーをチャンクアップで紹介し、この小説が、男二人の「一心同体」を描いていると、河合さんは解釈します。
ただ、河合さんの『ヴェニスの商人』の内容紹介は、ストーリーをある程度知っている人を前提で書かれている印象なので、Wikipediaのリンクを張っておくことにしましょう。『ヴェニスの商人』は、高利貸しのシャイロックが強欲な悪役として描かれます。そのことを取り上げる評論が多いのですが、河合さんは、そのあたりはスルーしている印象です。
ここはいろいろな解釈が可能であろうが、一つの考え方として、バサーニオとアントーニオの「一心同体」の友情は、下手をするとバサーニオが結婚生活を続けていくのに障害となることを意味している、というのがあろう。この二人の関係を「同性愛」とする解釈もあるようだが、別に同性愛と考えなくとも、男二人の「一心同体」の関係は、男と女の結婚生活を破綻に導く可能性がある。
一つ前のエッセイは、引きこもりのC君が、友人のD君による「登校を妨害する数々の言葉」によって、それが登校につながった、というパラドックスを描いています。河合さんは、「確かに友人のいいところは、ともかくその人と一緒にいるだけでほっとする、何となく安心だ、という点にある」と、語りつつも、そのエッセイの最後は…
しかし、この二人はそこに安住しているだけでよかったのだろうか。C君はとうとうそこを破って出てきたのだが、それは友人を裏切ることになるのだろうか。
と結んでいるのですね。つまり「一心同体」という言葉に含まれるニュアンスに、河合さんは、疑問を投げかけるのです。
この15話のタイトルは「一心同体の危険」です。河合さんは、当該エッセイの最後を次のようにまとめます。
このように考えると、一心同体の友情などは不可能に近いのではなかろうか。『ヴェニスの商人』ではそれが可能として描かれているが、それは途方もない僥倖や知恵などが重なりに重なってこそのことである。
なかなか成就し難いことを、一挙に達成されたかの如く感じるとき、人間はセンチメンタルになる。「一心同体」だというので、涙、酩酊、握手、抱擁、いろいろなことが起こるが、少し醒めた目でみるとき、あんがい、一人一人は別人だと認識されるかもしれない。
CBLコーチング情報局は、「共感」と「共感的理解」の違いを紐解いています。優れたプロコーチは、「一心同体」のセンチメンタルに陥ることなく、「クライアントは自分とは異なる他者」であることを、しっかり受けとめます。その上で、その人をまるごと受容し、寄り添っていくのがコーチングである、と最後にお伝えして、今回の解説を終えることにします。
共感とは「共に感じる」ということであり、価値観の異なる人同士が、その感覚を純粋に得ることは容易ではありません。そもそも人はそれぞれ別の個体であり、相手は自分ではありません。つまり自分ではないので、考え方、感受性は異なります。したがって「私はあなたと同じ感覚です」とは、言えないのが自明です。
言い換えると、「私はあなたの気持ちがわかる」と言い切ることに慎重になる心持ちが、共感的理解につながっていくのです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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