河合隼雄さんの『心の処方箋』は、「臨床心理学などということを専門にしていると、他人の心が…」という言葉から始まります。冒頭の5行に、この「専門」、「専門家」という表現が3回も登場することに、CBLコーチング情報局として、まず注目します。「専門家」は、この本のなかで、頻繁に登場するキーワードとなっています。
今日広がっているコーチングは、100年の歴史と体系をもつ「臨床心理学」の知見を背景に、新しい概念として提起されました。コーチングのプロコーチとは、特定のパフォーマンスの向上を目指し、成長しようとするクライアントに寄り添い、そのゴールに向かって伴走する「専門家」です。
一方で「臨床心理学」の対象となるクライアントは、「精神的・心理的な悩みを抱えている人」なので、コーチングとは異なります。ただし、人間の「こころ」に触れる「専門家」としての姿は共通しています。
一般の人が「この人は〇〇〇という性格だ」と速断するのに対して、人に深くかかわっていく私たち「専門家」は、タイトルの「人の心などわかるはずがない」を起点として、だからこそ、「その人を深く理解しようとする」心持としての力を有する「プロフェッショナル」といえるのです。
河合さんは、この最初のエッセイで「札つき」の非行少年と呼ばれる子のケースを紹介します。「親も先生も少年を立ち直らせることに努力してきたが、それが皆裏切られ、誰もが彼を見離したところでわれわれのところに連れてこられた」と、語りが始まります。
一番大切なことは、この少年を取り巻くすべての人が、この子に回復不能な非行少年というレッテルを貼っているとき、「果たしてそうなのだろうか」、「非行少年とはいったい何だろう」という気持ちをもって、この少年に対することなのである。「悪い少年」だときめてかからないことが大切である。そんなつもりで、少年に会ってみると、あんがい少年が素直に話してくれる。少年は涙を流しながら、実はお母さんが怖い人で、小さいときから叱られてばかりだったと言う。これを聞いて、「母親が原因だ」とすぐに決めつけてしまう人も素人である。
「専門家」に対する「素人」…河合さんの筆致が冴えます。
速断せずに期待しながら見ていることによって、今までわからなかった可能性が明らかになり、人間が変化してゆくことは素晴らしいことである。しかし、これは随分と心のエネルギーのいることで、簡単にできることではない。
「簡単にできることではない」ことを「やり遂げることができる人」が専門家である… そのことが伝わってきますね。
55で構成されるこのエッセイ集の「人の心などわかるはずがない」の最後4行で、本書のタイトルを『こころの処方箋』にした理由が語られます。次回以降も、55のなかからチョイスし、コーチングを語ってまいります。
「心の処方箋」は「体の処方箋」とは大分異なってくる。現状を分析し、原因を究明して、その対策としてそれが出てくるのではなく、むしろ、未知の可能性の方に注目し、そこから生じてくるものを尊重しているうちに、おのずから処方箋も生まれてくるのである。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.