(鷲田)
私は哲学というのは専門家のものだとは全然思っていない。哲学って身近なテーマばかりですし、皆が関係あるテーマばかりですよね。「ことばとは何か」とか、「身体とは何か」とか「他人とは何か」とか。
日本は明治維新になって、西洋の科学を必死になって輸入することになります。そのために、西周、福沢諭吉などが、日本文化にはどうも存在しないと感じられる「概念」を、漢字の組み合わせによって「日本語化」していくわけですが、英語の「philosophy」は「哲学」と規定されました。
「黒船」を目の当たりにした日本人は、西洋科学に圧倒されたわけで、それは崇拝に近い思いだったのでしょう。「西洋科学」をとても「ありがたい」ものとして、それまでの「あいまいな日本文化」を全否定するかのごとく、「西洋科学を紹介する翻訳日本語」は、とても硬く高等的(高踏的?)な言葉として綴られていくのです。「哲学」は、その典型のようにも感じられます。
現代日本における哲学者のオーソリティである鷲田さんは、日本人が抱いている、この「哲学へのバイアス」に対して、「臨床哲学」という新語を広め、そして実践することで「リフレーミング」を試みます。臨床家である河合さんは、そこに共感したのですね。
冒頭の引用は、『臨床とことば』第3章の5番目の見出し「言語化できない“臨床の知”」の最初で語られる鷲田さんの言葉です。河合さんはこの指摘を受けて、「味の違い」という粋な表現で「哲学」を捉えます。哲学者を専門家として捉えた場合の一つの解釈です。
そのときに、どこで味が違うかといえば、哲学者はそこを掘り下げて考えるという態度を常に持っているんですよ。だから、そういうふうにやりながらでも「ことばとは」「母とは」といったテーマをグーッと思索の中で掘り下げて、掘り下げたことを言語化するということを自分の職業にしておられます。われわれの仲間はそっちよりも、相談に来た人がよくなっていく方向へどうしても行くわけですね。
これに対し「哲学者の性(さが)」なのでしょうか…鷲田さんは、少し“あぶない”ところを口にされました。スリリングな対話が展開されます。
ここで筆者は、エグゼクティブコーチングのセッションを想起しました。コーチとクライアントが真剣勝負の対話を続けていくと、結構スリリングな展開となることがあります。
(鷲田)
だから、われわれのほうが一緒に病気になってしまう可能性がありますね。聴くほうも話す方も。
(河合)
だから、お互い相互乗り入れみたいになるんじゃないでしょうか。
(鷲田)
本当にそうです。われわれの習性みたいなものは、ちょっとやそっとのことでは納得しない。
(河合)
そう、そう。それで考えつづけに考えるわけですね。しかも、考えたことは次に言語によって表現しなくてはならないという責務みたいなものがあるわけでしょう。哲学者はね。僕らの場合は、それで表現できなくても、相手がよくなられたら、「まあ、こんなもんか」というところもあるんですね。
(鷲田)
ただ、その場合でも、患者さんの言葉を持たなければいけないんじゃないですか、自分を語る……。
「責務」という言葉が飛び出しました。
ところで、「患者さんの言葉を持たなければいけないんじゃないですか、…」にある「持」を「待」と読み違えて、最初綴っています(あるいは校正ミス?)。ただ、「持」であれば、「患者さんは言葉を持たなければいけないんじゃないですか、…」でなれれば、文意が通じないようにも感じられます。哲学者は「言葉ありき」ですから、そのスタンスで、鷲田さんは河合さんに訴えているのでは…と筆者は推測しています…ちょっと謎ですね。
この後に続く、河合さんの言葉は、「持」としても「待」としても理解できるのですが、鷲田さんの少し挑むような言質に対して、河合さんは事例を踏まえて応えます。
(河合)
ところが、いちばん典型的なのは子どもの場合ですよね。まったく言語なしで治りますから。そうすると、子どものほうは遊びだけでしょう? 遊びの変化とかを通じて、こちらは、その人がこういうふうによくなったと読んでいるわけですね。子どもは何も読んでいないですよ。最後は「元気になりました」で、終わり。子どもは、何もわからずによくなっていく。……
この後も、河合さんは言葉を尽くします。私たちコーチも言葉をとことん用いる専門家です。お二人の「言葉を尽くし合う」対話に、改めて深い「気づき」を得ています。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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