河合隼雄さんと中沢新一さんは「まったく違うタイプ」…「相補性」です!

(河合)
見ないタイプの人でしょうね。あの人はもう現実を細かく細かく……。それが夢だったわけですね。だから、それでやっていたわけです。結局、あるといったって、ないのと同じでしょ。だから、夢でやろうが現実でやろうが同じじゃないかと、僕はこの頃思い始めているんです。ユング派のファンダメンタリストなんかは、外でやっているのはだめで夢でやればいいみたいなことを言うけれども、僕はそれもまた間違いだと。パイを一生懸命こねて上等のパンをつくれる人は、べつに夢なんか見なくていいと思うんです。

本文249ページの『ブッダの夢』の第6章「汎神論風夢理論のこね方」にある、「生きることの塑形」(247ページ)の書き出しを引用しています。最後のこの見出しは、2ページととても短い。
小説にしろ、論文にしろ、「はじめ」と「終わり」はとても大切です。「起承転結」の「起」と「結」です。見出しタイトルは「塑形」と、あまり使われない表現です。グーグルで「塑形」を調べると、物理学的な用語が「そもそも」のようですが、その定義を拡大し、“形をつくる・形を整える”といった広がりを持つ「意味」としても使われているのですね。

さて、「生きることの“形をつくる・形を整える”」…この最後の見出しは、どのように〆られるのでしょうか。冒頭の河合さんの言葉は、前回の最後で、その前半を引用しています。「あの人」とは、柳田國男のことです。河合さんは、この6行で何を言いたいのか?(とても分かりにくい…)。「夢を見ないタイプ」と柳田國男を評しています。そして柳田のスタイルを「現実を細かく細かく……」と指摘していますから、ちょっとネガティブなニュアンスで語っているようにも感じます。
ただ、この2ページを繰り返し読むうちに、河合さんが訴えたいことの像がしっかりと「塑形」されてきました。河合さんは柳田國男に自分を見出している!

「ユング心理学の肝は何か?」と質問された場合、答えは「夢分析」です。スイスのユング研究所で、河合さんも「夢分析」を学びます。その内容を学術書でも紹介しています。
ところが河合さんは、ユングが極めたとされる「夢分析」を信奉するユング派のファンダメンタリストに対して、「間違いだ」と言い切っています。
ここからは筆者の想像ですが、河合さんは「夢分析」は学んだが、自分は「夢分析」を駆使してクライアントに接することはしていない… 言い換えると、自分は「夢」の中に入っていけない、「夢」をコントロールできない、ということを「自分の塑形」として認識してしまったのです。南方熊楠にはなれないし、だから「自分は柳田國男なのだ」という自覚です。自身のスタイルに「自己肯定感」を見出し、「自己効力感」として受けとめている河合さんは、「パイを一生懸命こねて上等のパンをつくれる人は、べつに夢なんか見なくていいと思うんです」と、中沢さんに告げます。

河合さんは「夢分析」について、次のように語ります。村上春樹さんが起きている時でも(夢ではなく現実の世界で)、地下二階の無意識に降りていくことができることを想起するように……

(河合)
小説でも、自分が思っていないようなことが起こってこないとダメですよね。自分が思っているとおりに書いているのでは文学作品にはならないわけでしょう。しかし、自分の夢というのは、なかなかわからないですね。自分の夢がいちばんわかりにくいです。
(中沢)
そうですか。
(河合)
次にわかりにくいのが、自分で分析している人の夢です。他人の分析を指導したりするときはすごくわかるんですけどね。やはり距離がありますから、傍目八目的にわかるんですよ。けれども、自分が分析している人の夢というのは、それほどわからないからいいんだと。傍目八目的にわかられたらたまったもんじゃない。わからんなあと思ってやっているから動くんじゃないかと思うんです。

『ブッダの夢』を徹底的に読み込んで気づいたことがあります。それは、「河合さんと中沢さんは、まったく違うタイプである」ということです。チベット仏教の修行を通じて、中沢さんは、スピリチュアルを体感しています。「幽体離脱」も経験済みです。つまり、中沢さんは「南方熊楠的」なのですね。一方で河合さんは「柳田國男タイプ」。お二人が惹きあうのは「相補性」そのものであるということが、しっかり理解できました。

今回で『ブッダの夢』を完結させます。最後の対話を引用し、次回に…別の本を取り上げ…つなげてみようと思います。

(河合)
そうそう、ピタッとわかるというのはやはり問題であってね。誰かが分析しているのを聞いたりしていると、すごくわかりやすいんです。それはもう自分が入っていないから。自分がやっている時に、それと同じようなわかり方をしてしまうと、やはり失敗なんじゃないかなと思うんです。僕らは夢がわかることが第一目標ではないでしょ。生きることが第一目標ですからね。
(中沢)
それを塑像するというか塑形することが大事なんですね。
(河合)
そういうことでね。
(中沢)
べつに夢の評論をやっているわけではないですからね。
(河合)
そうなんです。
(中沢)
陶器の評論を書く人もいるけど、でもやはり陶器はつくるものだと思いますね。
(河合)
これはしかし、夢の総論としては傑作なものになりましたね(笑)。
(1991・6・1)


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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