だれかの傍らにいるというただそれだけのことで、力を与えあう…

ケアをすぐに何かを「してあげる」ことと考えることには、ちょっとした落とし穴がある。そのことで患者は反対に、いつも何かを「してもらう」ひととして自分を意識せざるをえなくなるからだ。そのことで患者の生きようという力を削いでしまう面が、ケアするひとのそういう意識のなかにはあるのである。その意味で、患者に心配をかけることが結果としてケアになるということは往々にしてある。

臨床とことば』の第4章は、河合隼雄さんとの対話である第2~3章を受けて、鷲田清一さんの「一人語り」を集めた内容です。51ページに11の見出しが配されています。その中で、前回取り上げた「関心ということ」は、鷲田さんの強い想いが9ページにわたって綴られます。

コーチングにおけるクライアントとコーチは、「対等な関係性」であることは言うまでもないことですが、病院という治療の場においても、外形的には「ケアする人(医者・看護師)とケアされる人(患者)」である「関係性」も、そのことが見出せると、鷲田さんは言葉を尽くし語ります。その核たる言葉が「関心」です。

ひとはたしかに、じぶんのことを気に病んでくれるひとがいるということで、生きる力を得ることがある。見守られていると感じることで生き続けることができる。が、しかし、ひとは他人にそのように関心をもたれることによってのみならず、他人に関心をもちつづけることでも生きる力を内に感じることができる。生きる力というものは、しばしば、じぶんの存在が他人のなかで意味をもっていると感じるところから生まれるからである。

鷲田さんは、ご自身の著書『<弱さ>のちから』の中で紹介している、映画「えんとこ」(伊勢真一監督)をここで取り上げます。重度の障害者として東京都ではじめて養護学校の教員に採用された遠藤滋さんのお話です。
遠藤さんの障害は重くなり教職を辞し、寝たきり生活に入ります。にもかかわらず、遠藤さんは処を変えての「学校」を設立するのですね。

その介助を家族にではなく街の若者たちに、24時間三交替の介助体制でしてもらうことにした。それがもう10年以上続いている。介護の勉強も体験もしたことのない若者たちに、である。そしてじぶんでは何もできないというそういう状況そのものを「学校」にしようとしたのだ。

「学校」には、「生徒」が引き継ぎ事項などを書く「日誌」があります。その「日誌」には、「生徒」の個人的ななやみごとや、ときに遠藤さんへの不満も綴られます。その中にある対照的な文章を鷲田さんは取り上げます。

たぶん同じことを友達に話しても、すごく軽くとられるようにことでも、遠藤さんなら一生懸命聴いてくれるし、本気で答えてくれるし、それがうれしかったんだと思います。

あなたが言語障害を持っててよかったと思う。一言一言聞き漏らすまいと、耳を傾ける事ができるから。あなたが生まれてきてよかった。

後者の言葉は「文学」と言えるかもしれませんね。多様な解釈が生まれるのが「文学」ですから。鷲田さんは、両者について次のようにコメントします。

聴いてもらえてうれしかったという感想と、聴くことができてよかったという感想。つまり他人に関心をもたれることだけでなく、他人に関心をもつことで、じぶんを支えることができたという想いが、ここには綴られている。

次回もこの「関心ということ」を語ってみようと思います。

そういうふうに考えてくると、ケアの問題のいちばん核心にあるのは、ひとにおいてはだれかの傍らにいるというただそれだけのことで、力を与えあうという関係が両者のあいだで発生することになるのはなぜか、という問いだということが見えてくる。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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