愛する者のことばにも、さりげない命令、穏やかな命令が潜んでいる。一方がそれを命令形ではなく、命令ともつゆ思わず要求したことが、他方に折にふれて疼く根深い傷跡を刻んでしまう。あるいは倫理。ひとであるかぎり守るべき最低の約束事と思われることが、それに進んで従おうとする主体にさえ、見えない傷をのこす。あらためて言うこともないが、倫理もまた命令のかたちをとる。生き延びたいなら言うことを聴け。そういう掟として倫理はある。
『臨床とことば』第4章8番目の見出し、<生存の、「心」よりももっと古い生地>について、コーチング視点での解説を試みています。この見出しは3ページで構成されているので、他の見出しと比べて短いのですが、鷲田さんは、あえて抽象度の高いタイトルを配し「自問自答」をベースに話を展開しています。
そして最後の1行も…
きっと「心」よりももっと古い生地……。しかし、誰の?
で終えるという、「答え」をあえて提供しない「問い」を投げかけ、次の「見出し」に移っています。この「問い」は、読者に対するものだけでなく、鷲田さんご自身への「問い」でもあると筆者は受けとめました。
もし筆者が、鷲田さんに「この問いに対する答えは、………ということではないですか?」、と尋ねた場合に、「そうかもしれませんね」という言葉を返してくれるだろうと信じて、筆を進めてみようと思います。
冒頭の引用は、3ページ目に現れる鷲田さんの視点です。「倫理」は、実は「命令」であり「強制」としての力を持っている。ただし、それを受容している人は、「命令」とも「強制」とも感じていない、と指摘します。
鷲田さんの最後の1行…「心」よりももっと古い生地…にたどり着くヒントが、この鷲田さんの言葉にあるのではないでしょうか。
「心」よりももっと古い生地…は、当然意識されることのない、とても深いところに存在する「何か」です。このように捉えると、ユングが提起した「個人的無意識」と「普遍的無意識」がイメージされます。
フロイトは、無意識について案外シンプルに捉えます。生育の過程で生じる個人に固有な無意識です。ところがユングは、その「個人的無意識」はもちろん個々人に存在するが、さらに深い層には、生まれる以前から、すべての人類に共通な“何ものか”が付与されている、と考えました。それが「普遍的無意識(集合的無意識)」です。「ええっ? そんなことありえるの…」と思わず声を出してしまいそうですね。
河合隼雄さんは、ユングのこの概念を受けて、「心」と「こころ」を使い分けます。「こころ」は、ユングの提起する「無意識の全体」として、「心」と区別しています。
さて、今回のテーマである<きっと「心」よりももっと古い生地……。しかし、誰の?>、について、筆者の「視点」を最後に記述してみようと思います。
鷲田さんの言う「心」よりももっと古い生地とは、「生まれる以前から、すべての人類に共通する「普遍的無意識(集合的無意識)」であり、したがって「しかし、誰の?」は、個人を超えた「すべての人類」ではないのか?…と。
今回は、鷲田さんがあえて「謎」をかけてくれたので、その「謎」の解明にチャレンジしてみました。答えがないテーマについて、考えることの楽しさを筆者は感じています。「答えがない」ということは、さまざまな「解」が存在するということです。
コーチングセッションは毎回が異なります。その不思議に意義を見いだせた時、コーチとしての幸せを実感することができるのです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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