
父だってボケていた……と言うと、あれだけの頭脳と知識を持ち、最後まで常に思考を重ねていった吉本さんが、ボケるわけないだろう! と、父の全集の主たる読者である、団塊以上のオジ様たちは主張することだろう。
「戦後思想界の巨人」とリスペクトされる吉本隆明さんの長女で、漫画家のハルノ宵子さん執筆の『隆明だもの』を取り上げ、コーチングに敷衍しています。その中に収録された少し長めのエッセイの冒頭を引用しています。タイトルはズバリ「ボケるんです!」です。
32ほど集められている同書のエッセイについていくつか取り上げ、思うところを綴っていますが、「観察と記述の鬼」であるハルノさんが、世間がイメージする「吉本隆明」を「生身の人間」として、徹底的に解体していくという、そのプロの技に感服しています。「プロコーチに求められるものが、ここに書かれている」という視点で読み込んでいます。
このエッセイが長め(8ページ)であるのは、吉本さんのボケのプロセスが詳細に描かれているからなのですね。3ページ目の半ばあたりの記述を引用します。
一方で父は、他人から見れば最後まで一見マトモだったと思う。インタビューなどにも、事実誤認はあるものの(それは昔からだけど)、そこそこにマトモに答えていたし、元々父の著作を分かりづらくさせていた、表現の“飛躍”の度合いが増して、ますます誤解されやすくなっていたが、思考にブレはなかった。
ハルノさんが指摘する「表現の“飛躍”」は、吉本さんの本を読むと、「確かに…」と感じられます。ただ、それこそが吉本さん「凄さ」であり、リフレーミングが思想に結実していく、その「妙技」に圧倒されるわけです。
ただ、「誤解されやすく…」というのも確かで、上野千鶴子、小倉千加子、田中美津の三氏が、吉本隆明を徹底的に語り合う『吉本隆明を巡って』(河出書房新社)を読むと、「そういう捉え方もあるのか…」と、それはそれで感慨を覚えます。生成AI(Copilot)に「同書の内容を簡潔に紹介して」と、質問すると、以下が返ってきました。
3人の女性論者が、吉本隆明の思想・影響力・限界をフェミニズムの視点から徹底的に論じる。「批判」というより、“吉本隆明という巨大な山をどう読むか”をめぐる濃密な思想的対話。1990年代以降の吉本再評価・再批判の文脈で重要な一冊。
ただ同書は絶版のため、「アマゾン」の検索にはヒットしないので…ちょっと残念ですが。
ハルノさんは、吉本さんのボケはじめを次のように語ります。
父のその兆候は、2000年から始まっていた。ある深夜、父が書斎の机の前にゴロンと寝転がっていたので、真冬だったし「カゼひくよ、ちゃんと寝た方がいいよ」と声をかけると、「ああ…キミか、オレ今どこにいるのか分からないんだよ」と言う。ゲゲッ! と思ったが、なんとか起き上がらせ、ここは書斎の机の前だと説明し、あわてて寝所にしている客間に布団を敷いて寝かせた。それが最初だった。
ここからボケの実体を、生活を共にしている娘の視点で語っていくのですね。読者をして「ええっ?」と、思わず引き込まれるリアルな吉本さんです。ただし……
しかし相変らず、精神の活動だけは活発だ。だが五感から入ってくる情報は限られている。テレビなんかを付けたままうとうとしていると、半覚醒状態の中、耳から入ったわずかな情報をぶっ飛んだ方向に変換した脳が、とんでもない妄想を作り出す。「今テレビのニュースで、村上春樹がオレの悪口言ってやがった」なんて言う(村上先生ゴメンナサイ!)。
ちなみに吉本さんは、両村上(村上春樹と村上龍)を、日本が産んだ天才作家である、と高く評価しています(なにかの本で、そのように語っているのを記憶しています)。
このエッセイは、どのように〆られるのか。最後あたりで、「父と共産党(共産主義者)とは、戦後ほどなく激しい論争があったことは、知識として知っている。しかし私がまだ赤ん坊の頃の話だ…」と、共産党との因縁が語られるのですね。
その内妹夫妻にも、「キミらだって共産党のシンパだ」と言い出す。妹が「じゃあ、共産党って悪いの?」と切り返すと、「イヤ悪くはないさ」と言う。「でも、お父ちゃんだって吉本はオウムのシンパだって言われたらイヤだったでしょう?」と言うと。「オウムって何だ?」と返され、皆で吉本新喜劇のように大コケした。
このことは、妹も父の全集の刊行記念イベントの時語っているし、後にもどこかで書いている。
最後の2行を引用して、今回の「コーチング大百科」を終えることにしましょう。
ボケるのは決して悪くない。不安なオジ様たちだって、きっと青春に帰れますよ。安心してください。皆ボケるんです!
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.


