
(河合)
ぼくは、だいたい小さいときから舞台の上に立つのが好きやったからね。不思議なんだけど、ぼくの家は代々百姓ですからね。
(吉本)
それって持って生まれたものなんでしょうか? 向き不向きっていうか。遺伝のような。
(河合)
ある程度、あるでしょうね。だから、百姓の間に芸人の血が入ったに違いないと言ってるんだけど。いつの頃か、旅芸人か何かが来て、子どもが生まれたじゃないかなと、ぼくは想像しているだけど(笑)。
(吉本)
自伝と違うこと言ってる(笑)。
河合隼雄さんと吉本ばななさんの対談『なるほどの対話』の第1章「若者のこと、しがらみのこと、今の日本のこと。」の10番目の見出し「しがらみ」の始まりを引用しました。
この見出しの対話は「6ページ+α」ですから、一つ前の「言葉とデリカシー」が16ページなのに対し、短めです。そして筆者は、ここでの対話にコーチングの「型」を見出しています。
「コーチングのスキル」は、さまざま存在しますが、「このコーチは本当にプロフェッショナルだなあ」と、相手が感じる能力に「質問力」があります。資格取得のための「コーチングスクール」で、最も時間を費やすのが、この「質問力の修得」です。
ばななさんは小説家ですから、プロコーチではありません。ただ世界的に評価される作家としてのばななさんは、コーチングマインドが備わっている。まさに、ネイティブコーチ、ナチュラルコーチです。
さて、コーチングにおける質問は、「だらだら」はご法度です。わかりやすい端的な表現が求められます。
コーチングの視点で、この「しがらみ」を読み込むと、ばななさんがエグゼクティブコーチで、河合さんはエグゼクティブクライアントとなっている。この「6ページ+α」の対話で、ばななさんのコメント(吉本)は、27回登場します。そのうち1行で納まっているのが18回あるのですね。
冒頭で引用した「自伝と違うこと言ってる(笑)。」のような「感想」も含まれますが、質問が半分を占めています。いくつか紹介しましょう。
- どんなときにですか?
- 「都会ふう」とは、どういうことですか?
- 日本と外国だったら?
- それは、たくさんの人に会ったから、一人が好きになっちゃったんですか?
こんな感じです。1行を少し超える質問も挙げてみます。
- 「都会ふうがダメ」とおっしゃいましたが、じゃあ、東京にいるときより関西にいるときのほうが気楽なんですね。
- あれって、日本から行くから気楽なのか、住んでても気楽なのか、どっちなんでしょう?
河合さんは、この質問に「日本から行くからでしょうね。……」と答え、3行ほどその理由を語り、そして吉本さんに「しがらみがありますか?」と、質問しています。
(吉本)
いやあ、ありますねえ。あるというか、それを振り切ることに人生のなかのエネルギーの75パーセントは使っていると思います。
(河合)
ははあ……、そうですか。
(吉本)
そう、今日はそのことを河合先生はどう思っていらっしゃるのか、もうちょっと深く訊こうと思って。
この見出しの半ばあたりで現れるやりとりです。編集者が、見出しタイトルを「しがらみ」とした理由が伝わってきますね。ここから、河合さんの「ふかい」世界が引き出されていくのです。はばななさんの「質問力」に感服です。
筆者は常に「コーチング」のことを考えているので、こうやってつながるのですが、ばななさんは、河合さんという巨匠に対し「コーチングの戦略」を立てて臨んでいる。
プロコーチは、「会話」と異なる「対話の価値」を提供する「専門家」です。『なるほどの対話』は、改めて「コーチングの書」であることを、見出しています。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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