（中沢）
夢分析というのは素材を造形していくものですよね。ところがフロイトの夢分析というのは言語からいってしまうから、土の部分がなくなってしまうわけです。感覚的素材の問題がないところで夢が分析されていく。けれども夢というのは、花とか木とか血液とかいうものと同じように、もともと具体的な素材でできているわけで、それがいかに構造化されているかということが夢分析の根源にならなければならないということをレヴィ=ストロースは言いたいわけです。そのことを言うために、土器づくりをもってくるんですね。レヴィ=ストロースはもちろんユングのことなんか一言もいっていませんし、神話分析に対しては批判的ですよね。
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談である『ブッダの夢』第6章「汎神論風夢理論のこね方」の、9番目の見出し「夢と箱庭療法」の書き出しを引用しています。
キーワードは「土」です。中沢さんの「土」、そして「大地」に対する想いの強さに筆者は共感します。「土」には匂いがある。
5月12日に公開した、初期のボルシェビキは、「知性によって社会が改革できると信じたんですね」では、「大地」と切り離されたユダヤ原理とロシア革命との関係について、中沢さんの視点を引用しています。
そして、5月14日は、「大地」から生成されると、「使用価値」とは別の「新たな価値」が宿る、というタイトルで、「土・大地」には、生命をはぐくむ「何ものか」が宿っているのではないか…というイメージを投影してみました。
中沢さんが「葛藤」し続けたテーマは、キリスト教世界によって造られた西洋の「言語」と日本の「ことば」は、言語学的なアプローチとは埒外の「根本的な違い」が存在し、どう足掻いても西洋人的（フロイトに代表されます）な「ロジックとしての言語」を理解し、扱うことはできない、ということでした。ロジックは切り分けることです。「二分法」に象徴されます。
「葛藤」という彷徨の時代を経て、もともとクリスチャンであった中沢さんですが、決定的に転向します。それは「唯識」であり「中観」でした。
『ブッダの夢』は、この思想を共有する河合さんとのコラボレーションが生み出した「日本の思想書」であると、筆者は総括しています。
冒頭の引用の続きです。
（河合）
そうです。
（中沢）
けれども、彼が言わんとしているのは、その感覚と素材の問題なんです。大地の問題なんですね。
（河合）
レヴィ=ストロースがユングを批判するのは、僕はわかるんです。つまり先程のユング派ファンダメンタリストというのが出てくるんですよ。
（中沢）
安易なんです。
（河合）
本当にね、そういう類が出てくるわけで、それは僕も嫌いです。どうしても、そっちのほうが多くなるんです。
ユング派心理学者は世界に広がっています。河合さんは、その資格を日本人として初めて取得したフロントランナー。河合さんが語るユングを最初に取りあげたのは、2023年7月12日の＜河合隼雄さんが語る「ユング心理学の特徴」とは？＞からです。河合さんは「ユングの言うとおりに従おうとする人はユング派ではない」、と語ります。河合さんの「相対化する力」は別格ですね。
今回の解説は、中沢さんから始まり、河合さんで〆ることができました。次回もお二人が語り合う「日本の思想」について、紹介してみようと思います。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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