中沢新一さんの「はじめに」(+ 小川洋子さんの「あとがき」)を紹介します

線路にそってホテル全体がゆるやかにカーブしていくような、東京ステーションホテルの小さな一室で。数年前に『華厳経研究会』という集まりが開かれていて、そこに呼ばれていったぼくははじめて、河合隼雄先生にお会いしたのだった。
仏教の専門家や科学史家や脳科学者を集めたユニークな研究会で、河合先生ははなから冗談ばかりとばしてした。そのころはまだ、世間が河合先生のことを、むやみと立派で偉い人のようには扱っていなかったので、その冗談たるや天衣無縫、荒唐無稽、抱腹絶倒の傑作ばかり、これほど自由な精神が日本にも生息しているのだ、といううれしい発見に、僕の胸はたかなった。

前回は、全6章で構成される、河合隼雄さんと中沢新一さんの対談『ブッダの夢』の最後の章「汎神論風夢理論のこね方」の、最初の見出し「マラヤの夢理論」を語り始めたのですが、河合さんの「あとがき」も紹介しています。同書は2001年の出版ですから、河合さんの晩年(2007年に逝去)のコメントです。
河合さんの人生が伝わってくる「たましいの言葉」が綴られています。

河合さんの対談本は、対談相手と「はじめに」と「あとがき」を分担して出版されるので、したがって『ブッダの夢』の「はじめに」は、中沢さんが筆をとっています。そこで、今回は、「はじめに」で描かれている「河合先生論」を紹介することにします。冒頭は、その書き出しです。
河合さんの最後の“仕事”は文化庁長官です。Wikipediaに「文化庁長官就任」という見出しの中で、河合さんの「最晩年」が次のように記述されています。

文化庁長官就任
2002年1月18日より第16代文化庁長官に就任。民間人(非官僚)の起用は今日出海、三浦朱門に続き17年ぶり3人目となった。2年の任期が終了した後も、お得意の駄洒落で盛り上げる講演をするなど、文化庁の知名度向上に貢献した手腕を買われ、2度に亙って長官留任を要請され、2006年10月31日まで3期4年余在任した。(中略)
2006年8月17日午前、奈良県奈良市内の私邸で脳梗塞の発作を起こして倒れ、天理市の天理よろづ相談所病院に搬送され緊急手術を受けたものの容態は回復せず、2006年11月1日に文化庁長官職を休職。2007年1月17日付で任期切れにて退任した。
2007年7月19日14時27分、脳梗塞のため天理市の天理よろづ相談所病院で死去。79歳没。

河合さんの人物像を称えるさまざまの「文」を読んできました。この「CBLコーチング情報局~コーチング大百科」では、最後の対談相手となった小川洋子さんが、「お別れの会」に参列した時の「想い」をしたためた「少し長すぎるあとがき」を紹介しています。「たましいの語り」です。
中沢さんの「語り」は、2001年だと思うので、晩年とはいえ、河合さんが精力的に活動されていた時期に書かれています。これもすごい「はじめに」です。4ページ全てを紹介したいところですが、よりすぐりのパラグラフを引用し(次回もやってみます)、コーチングを考えてみようと思います。今回は、中沢さんの「たましい」が感応したシーン(の一つ)を紹介し、終えることにします。

お会いする以前から、ぼくは河合先生の日頃の物言いに、どこか中国の禅宗のお坊さんめいたものを感じていた。たしかに世のなかには照れで、「わたしはいいかげんな嘘つきで」とか「生まれてこのかた、まじめなことをひとことも言ったことがありません」とか言う人がいる。しかし、河合先生の場合は、かなり硬質な精神をかかえた自分のとりあつかいに困って、照れで「嘘つき」を自称しては自分を癒そうとしている人たちと違って、なんというか、セラピーをつきぬけてしまった、自由な精神の凄味みたいなものを感じさせるところがあり、そのあたりの感触が、ぼくに中国人の禅宗のお坊さんを連想させたのだった。
しかし、お坊さんは冗談で元を取ろうしているところがある。バカなことを言っているようで、じつはそのバカ話には、人生に重要な教訓が含まれているかもしれないのである。そう思うと、おちおち笑っていられない。ところが、河合先生の冗談には、そういう「隠された功利主義」すら、感じることができない。裏がない。底がない。そして気がつくと、ぼくたちは無意味の淵で、笑いころげているということになるのである。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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