（河合）
僕はだいたい、あんまりケースは発表しないんです。下手に発表すると、その人が喜んでしまってね、インフレーションを起こすんです。あれは私なんですよとか、みんなに言って歩いたりとかね。私は河合先生の本に載ったんです。で、そのためにおかしくなる。
（中沢）
芸術家と思っちゃうんでしょうね。
（河合）
そうです。この人は絶対大丈夫です。この作品 [写真11参照] は、さっきの、あさとルビーの話の続きになります。……
([写真参照]については、著作権の関係で紹介できないことをご了解ください)
河合隼雄さんと中沢新一さんの『ブッダの夢』を取り上げてのコーチング解説を重ねてきました。2月14日から、第2章「宗教と科学は対立しない」を終え、第3章「箱庭療法の宗教性」に移り、8回ほど綴っています。この第3章は43ページの分量であり、それが7つの見出しで構成されています。ただし最初の見出しであるこの「箱庭療法とは」は18ページですから、それ以外の6つの見出し（4ページ程度）に比べてとても長いのです。その理由を考えてみました。
「箱庭療法」の治療を半年間継続して受けたクライアントが、その間12回ほど箱庭をつくり、それを河合さんが撮影しています。残念ながら著作権の関係で、読者の皆様には写真を紹介できないのですが、クライアントの作る箱庭（作品）はどんどん変化します。1枚目はぐちゃぐちゃです。それが最後になると、説明されなければ「プロが作ったジオラマですね、素晴らしい世界観が表現されていて感動します！」と、鑑賞者をして言わしめるだろう作品になっているのです。
河合さんは、12の作品一つひとつについて、クライアントの「こころ」が変化しているプロセスを丁寧に、そして流れるように、中沢さんに説明します。つまり、編集者が途中で「見出し」を変えることができなかった、ということだろうと筆者は類推しました。
今回で、この18ページの見出しを取り上げてのコーチング解説を終え、次回より第3章の2番目の見出し「箱庭がクライアントの心を導く」に移ります。冒頭の引用は、最後の作品 [写真12] を紹介する前ふりといった感じの河合さんのコメントです。
「有名になりたい」というのは、多くの人が抱く願望（つまり承認欲求です）ですが、人の本質を見抜くプロフェッショナルの河合さんが、「このクライアントはそうではない」、と断言しています。クライアントは人格的にも素敵な人であることが伝わってきますね。残り1ページになって、最後の作品紹介が始まります。
（河合）
…… そして、次の作品 [写真12参照] になります。次の日、起きると、あさは、見たらルビーがいないんです。このへんがとても不思議なんですけど、あさという女の子が箱庭では少年になっているんですよ。……
「あさとルビー」の物語は、[写真8]から始まるのですが、そのストーリーテリングの素晴らしさを、2月25日にアップした解説で紹介しています。今回は、その完結編が語られます。中沢さんの「神話みたいですね」という言葉が印象的です。
18ページで綴られた「箱庭療法とは」の最後の語り合いを引用して、次回につなげることにします。
…… ルビーがいなくなって、あさは今まであったことは全部夢だったんだろうかと思うんです。そして、起きて見たら、ここに石があって、その石がルビーの色にパーッと輝くんです。それで、ああ、全部本当にあったことで、ルビーは石になったんだとわかります。
（中沢）
神話みたいですね。
（河合）
ええ、それで治療は終わりです。だから、非常に直接的に僕との関係という段階から心の中のルビーになっていく……。
（中沢）
象徴ができたわけです。
（河合）
このルビーが石になって、自分の心の中におさまるわけです。そして、完全にこの人は強くなって、安心です。
（中沢）
すごいですね。
（河合）
ええ、この人はもちろん神話とかまったく読んでいませんが、心の中から、そういう話が出てくるし、本当に僕が感銘した人です。もちろん、デプレッションは完全によくなりました。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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