(河合)
僕は宮沢賢治の『ビヂテリアン大祭』(以下宮沢賢治の作品はちくま文庫)というのはね、読んだ時から大好きだったんです。今度アメリカへ行った時、今からする話をしてやろうかなと僕は思っている。というのは、僕らの仲間に、ヴェジタリアン、多いんですよ。だけどどこまで真剣に考えているかどうかね。この年代に賢治自身ヴェジタリアンになっているんですよね。
(中沢)
このころの方がよく考えてたんじゃないですか。
今回から、河合隼雄さんと中沢新一さんの『ブッダの夢』を引用してのコーチング解説は、同書の第2章「宗教と科学は対立しない」に移ります。その最初の見出しは「『ビヂテリアン大祭』の衝撃」です。引用は、その書き出しです。
この第2章は、宮沢賢治ファンであれば、興奮必定の内容です。というのも、8つの見出し34ページの全体像は、「宮沢賢治の世界…その評伝」とサブタイトルを付けたくなる内容だからです。
筆者は第1章を、河合さんと中沢さんが、西洋文化と日本を含む東洋文化を対立するものとして捉えるのではなく、その結節を目指そうとする試みであると受けとめ、描いてみました。そしてこの第2章は、処を変えて、お二人の「その試み」が「宮沢賢治の生きざま」に仮託されるのです。
宮沢賢治については、多くの日本人が「センチメンタルな人」とイメージ化しているかもしれません。宮沢賢治の全作品を読破されていると感じられるお二人の対話は、そのイメージを、ものの見事にリフレーミングしてくれます。
宮沢賢治は、1月7日に公開したコーチング解説で一瞬登場します。第1章のその箇所を引用してみましょう。
(中沢)
日本の近代の場合、内側から来るものと外側から来るものがぶつかりあうのは、まあ、昭和十年頃じゃないですか。かろうじて、なんか調停点が来たなと思われるのは、宮沢賢治のころです。西田幾多郎や宮沢賢治のころ、調停点がつくられたなと思ったら、それが一気に国家主義のほうへすくわれていって、崩壊してしまった。……
中沢さんが言葉にする「宮沢賢治のころ」とは、1920年から30年代にかけての時代ですが、この第2章で次のようにつながるのです。
(中沢)
……たとえば賢治の仏教の問題とか、西田の禅の問題とか、あるいは日蓮信仰に収斂していくような生命論の流れが、日本の1920年か30年代、ちょうど宮沢賢治が絶頂を迎えたころ、西田幾多郎が絶頂期に入り始めたころに、日本人の中から現れた。僕は宮沢賢治の作品はそういう運動の一つの結晶体なんだろうと感じているんです。
(河合)
なるほどね。ところが、後に賢治の作品を好きになる読者は、センチメンタルに受け止める人がたくさん出てきます。『雨二モマケズ』なんてその最たるもんだけど、あの『雨二モマケズ』だって、いま言ったように、生命論的に読めるんだけど、一般の教育者は、非常にセンチメンタルに、なんか気の毒な人は助けましょうというようなね。作品の重層性というか、あるいは矛盾を抱えて、横溢している点を見なくて、なんか、ボランティア精神の権化みたいに見ている人がたくさんいるんじゃないですかね。
(中沢)
活火山みたいな人です。
日本経済新聞の1月9日版の1面「春秋」に、この『雨二モマケズ』が取り上げられていました。SNS全盛時代にあって、ボランティア活動の一挙手一投足までもが「監視」されてしまう今日の状況を憂いている内容です。4つのパラグラフで記述されている3つ目を引用します。
「東二病気ノコドモアレバ、行ッテ看病シテヤリ……」。哲学者の谷川徹三は宮沢賢治が病床でつづった「雨二モマケズ」について語っている。「日本人の作ったあらゆる詩の中で、最高の詩」「精神の高さにおいて、これに比べうる詩を私は知らない」。本作は、困難な境遇の人のもとへ「行く」という動詞を反復する。
次回より、お二人の描く宮沢賢治像を、共感をもってコーチング解説につなげてまいりますので。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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