僕がいちばんはじめに説得したいやつが河合隼雄というやつです!

(河合)
……そこで、似たような笑い話?を僕の方から一つ。僕は糖尿病の学会によく呼ばれるんですね。どうしてかというと、糖尿病の人というのは、お医者さんから「あなたは食生活をこう改善して、お酒をやめて、どのくらい運動して」と言われるけど、そのとおり完璧に実行できる人なんかいやしませんね。

引き続き『臨床とことば』第3章の8番目の見出し、「個より普遍に至る道」を取り上げてのコーチング解説です。前回の最後に引用した河合さんの語りの続きを冒頭で引用しています。
「病院とは医者や看護師が患者をケアする場である」と、誰もが自明として受けとめる「視点」に対し、カウンセリングの臨床経験を踏まえ、「いや、われわれは助けるばかりじゃない。われわれが助けられる側に回ることが、すごい意味を持っている」という「別の視点」を河合さんは提供してくれました。まさに「リフレーミング」です。
上記引用の続きです。

そこで、正しいことを教えてもなかなか聞き入れてくれない人を、どうしたら説得できるか。それを僕に教えてほしい、というわけですよ。それで、僕が呼ばれた意味がよくわかりましたけれども、僕の答えは「説得なんかできません。もし説得して変わるんやったら、僕がいちばんはじめに説得したいやつが河合隼雄というやつです」

河合さんの言葉に多くの人が引き付けられ、真剣に聴きたくなる理由(わけ)が、見事に腹に落ちてきます。リフレーミングの達人であり、コーチングの先達として、筆者は河合さんをリスペクトしています。

そうでしょう? 「隼雄よ。お前、もう少し真面目に生きなさい」とか言われたって、「はあ」とか言うだけで、ほとんどできない。なかなか人間変わるというのは大変なことなんだから。ただし、変わるのは大変なことだけど「一緒にやりましょう」と言う人がいたら変われます、というのが僕の考えです。だから学会の先生方に言ったんです。「もし僕の言うことを嘘だと思う人は、生活習慣をなかなか変えられない人が来ても“ばかやろう”などと言わずに、“変わらんからと言うて、ばかにせずにちゃんと付き合ってください。そしたら面白いことが起こりますよ”って伝えるように」とね。それで一年後に行った、ちょうどそのケースを発表しているお医者さんがいたんです。

近年、医療の現場(臨床)に「ナラティブ・アプローチ」が導入されるようになりました。「医者が患者を治す」という一面的な視点ではなく、患者一人ひとりの物語や経験を重視し、共有しながらアプローチしていくことです。
「ナラティブ」は「物語」のことですが、日本人はどうも「カタカナ」にしてしまうのが好きなようで、「ナラティブ・アプローチ」というワードが広がっていくことで、この「概念」が共有されていったようです。

河合さんは、この「カタカナ」が認知される以前より、この「概念」を広めるべく活動されてきました。コーチビジネス研究所は、米国発のコーチングを日本に導入・浸透させることをミッションに掲げています。「ナラティブ・アプローチ」と「コーチング」は、文字表記は異なるものの、その「概念」は共通する地盤に立っていることを、しっかりお伝えすることで、今回のコーチング解説を終えることにします。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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