(河合)
両方でしょう。完全に両方なのに、片方だけ言うと危なくなると思いますね。そうすると、片方だけの知識を持ったら、皆「自分は臨床家になれる」と思うわけです。絶対になれないですよね。その証拠にいくら本を読んでもなれないですもの。今おっしゃっている、ちょっとことばになりにくいほうのも含めて、臨床の知があるんですね。ただ、言語化しようと思って、僕らも苦労しているわけですけれども。
前回に続き、『臨床とことば』第3章の5番目の見出し「言語化できない“臨床の知”」を取り上げます。前回は河合さんの言葉のみを引用しましたが、今回は鷲田さんの問題提起に注目してみようと思います。
さて、河合さんは何を言わんとしているのか? 前回の最後に紹介した河合さんの言葉を再掲します。
日本語には良いことばがあって、「では、そろそろですね」とか。何かわからないけれども、そしたら、向こうも「そろそろですな」とか言って、だんだん歩み寄っていくわけです。
ここは禅問答ですね。「禅」は、中国で誕生し日本に輸入された「思想」ですが、日本では武士が勃興する鎌倉時代に広まり、「日本的な洗練」を経て、現代日本に受け継がれます。「日本には良いことばがあって…」と、河合さんが「言葉」にするように、「禅」は「日本独特の言い回し」も含めて、成熟化を遂げているとも解釈できそうです。
さて、冒頭の引用は、「そろそろですな…」を肯定する河合さんの視点に対して、鷲田さんが……「ふつうの科学」だったら、全部透明に論理的に分析をクリアしないといけない、その一方で「臨床の知」というのは、わからないものをそのまま認めた上でも「これで終われる」という感触をもつことができる……と問題提起したその後で、河合さんが応えたところです。河合さんは、「両方」であることが大切であると、論を展開します。河合さんによる「言語化」であり、ユングが提起し、河合さんが語り続ける「相補性」です。
臨床心理学者の河合さんは、「臨床(カウンセリング)の最中」は分析を試みることなく流れに身を委ねます。そして、経験を積んだ臨床家(専門家)の「勘」を次のように言葉にします。
(河合)
最中はわからない。わからないけれども、勘はあるんですね。うまくいっているという勘ですね。そのときの「自分はうくまいっている」というものを支えているのは何かというと、いろんな支えがあるわけです。その支えをたくさん持っていないと、理屈だけではだめだと思いますね。考えてみたら、なかなかうまくいっていないように思うけれども、遠いところからお金をかけて電車に乗って、その時間に来てくださいるというだけでも、やっぱり何か意味はあるわけですね。
(鷲田)
エネルギーの要ることですものね。
(河合)
そうですよ。
続く、「ふつうの者」が登場する鷲田さんの指摘に、河合さんが軽妙に応える対話を引用し、今回のコーチング解説を終えることにしましょう。
(鷲田)
臨床心理士や精神科医の人はもちろん、別に何も専門的な知識を持たない私のような者でも「あっ、いいほうに向かっている」とか「変調が起こりつつある」とかいうことはわかりますね。ふつうの者が、ほかの家族あるいは友達とか同僚とかを見ていて、変調というのはわかる。顔をパッと見ただけでも「おかしい!」とわかりますね。ああいうものというのは、何を見てそう思っているんですかね。あるいは、そういう知識や勘はどこから……?
(河合)
そういうものは、もっと研究に値しますね。人間は皆、そういうものをものすごく持っているわけですよね。その中で、言語に比較的しやすくて論理体系に乗るほうの知識が、どうしても価値を持ちますね。今までは、それだけが知識みたいになりすぎたんじゃないでしょうか。それが非常にひどくなっている人とか、ものすごく偉い学者だけど何も気がつかない人とか、いるでしょう? それはそっちのほうに傾いてしまっているわけです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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