“虫”をメタファーとして自在に言葉にする“日本人の無意識”に関する一考察

前回から引用をはじめた、河合隼雄さんの『大人の友情』の2話目は「馬が合う、虫が好かない」です。河合さんは冒頭で、「主語は“馬”、“虫”と人間でないものになっているところである」と、コメントし、「類似の表現が外国にあるかどうか?」思案した後、「キリスト教文化圏では、人間の感情を表現するのに、人間以外の生物を主語にすることは、まずないであろうと思う」と、推測します。

ここから、会社の中で「虫が好かない」「腹の虫がおさまらない」新入社員がおり、「それが原因で、会社を辞めたい」と、クライアントが訴える事例を、河合さんは紹介します。

こんなときに、一番大切なことは、その話に耳を傾けて聴くことである。こちらが熱心に聴いていると、話をする方にも熱が入ってあれこれと話すのだが、そうすると話し手の方が、話しながら新しい事実に気がつくのである。あるいは、話の内容が自然に変わってくることもある。

カウンセリングは、精神的な悩み、それが通常の社会生活を営む上で、うまく適応できていないクライアントが中心となりますが、多くの人が「虫が好かない」と言葉にするように、この事例は、通常のコーチングセッションとも感じられますね。

この場合は、新入社員の悪口ばかり言っていた人が、急に、「私も仕事、仕事、で熱心にやってきたのですが……」と言って、ふと黙ったりする。こんなときも、カウンセラーは、その話に耳を傾けて、ちゃんと受けとめて聴く。そんな会話を続けているうちに、この人は、「自分は仕事をする人は善」、「遊ぶのは悪」などとあまりにも決めつけて生きてきたのだが、やっぱり人生にはどちらも大切で、新入社員の若い子は、その辺を上手にバランスよくやっているのではないだろうか、ということを言い始めた。

コーチングでも、もっとも大切なのは「傾聴」であり、臨床心理学者の河合さんも、最晩年の当該エッセイ集の第一話、そしてこの第二話で、熱心に語られます。
コーチに「受容」されていると、心理的な安心感(心理的安全性)を抱くことができたクライアントは、そのコーチの「傾聴」によって、自身の「無意識」に向かって、その探索が開始されます。
ユング派心理学者である河合さんは、「虫」という言葉をきっかけに、このエッセイで西洋との対置、そして20世紀初頭の深層心理学者に思いを馳せ、「無意識」のもつ重要性を振り返ります。

キリスト教文化圏では、おそらく「虫」を主語にして、自分の気持ちを語ることはないだろう、と言ったが、これは、やはり人間は他の動物と異なるし、主体的な意味を持って生きていると考えるからだろう。しかし、そうは言っても、人間の意識はそれほどしっかりとした主体性をもっているだろうか、と二十世紀になってから、フロイトやユングなど深層心理学者たちが言いはじめ、今日では、一般にもよく知られているように、「無意識」の重要性が論じられるようになった。人間の意識は思いのほかに無意識によって影響されている、とこれらの人は主張する。

「虫」からスタートするこのエッセイの最後も、河合さんは「虫」で〆ています。CBLコーチング情報局は、この第二話を、「“虫”をメタファーとして自在に言葉にする“日本人の無意識”に関する一考察」と、副題を付すことにしました(笑)

日本語の表現の「虫が好かぬ」、「虫の知らせ」、「腹の虫がおさまらぬ」などという、「虫」を「無意識」のことと思うと面白いのではないだろうか。「虫が好かぬ」ときは、「俺の無意識はどうなっているのかな」などと思うと、新しい発見があったり、「虫の好かぬ」相手のいいところが見えてきて、友人になったりする。「虫」の分析を通じて己を知るのである。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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