2009年に発刊された河合隼雄さんのアンソロジー6冊の第1巻は、1967年の諭文である『＜心理療法コレクションⅠ＞ユング心理学入門』です。
279ページ（その後283ページまで「23の注・出典」が掲載されています）のボリュームで綴られたこの巻の〆ともいえる内容が、「意味のある偶然の一致」です。276ページです。
自己実現における重要な時において、われわれはしばしば、不思議な現象に出会うことがある。それは偶然にしては、あまりにも意味の深い偶然と考えられる現象が起こるのである。たとえば、今まで絵には全然関心がなかったひとが、友人と絵の展覧会に行く夢を見る。そして、分析家の所で、自分の劣等機能としての発展という点から、絵を見にゆくのも意味があるだろうと話し合う。帰宅すると、夢に見た友人から電話があって、絵の展覧会にゆこうと誘われるといったような現象である。これは、いわゆる夢のお告げといわれるもので、予知夢のことについて述べたときに、例も示しておいた。このような、「意味のある偶然の一致」（meaningful coincidence）を、ユングは重要視して、これを因果律によらぬ一種の規律と考え、非因果的な原則として、同時性（synchronicity）の原理なるものを考えた。（276ページ）
いかがでしょうか？
ユング派心理学を説明する際、この同時性・シンクロニシティは「必ず登場する“キーワード”」です。ただ「必ず登場する“理論”」、という表現はとられません。河合さんは、「これは心理療法という、人間の心の現象を取り扱う仕事に従事していると、他のひとたちよりも数多く、このような現象に出会うとも考えられる」と語ります。
心理療法の過程で「このように偶然が重なるのは、たんなる偶然とは思えません」と、クライアントの感想を紹介した後、河合さんは次のように“意味を補足”します（慎重に…）。
しかし、このような同時性の現象を因果律によって説明しようとすると、それはただちに偽科学（魔術）に陥る。死ぬ夢を見たから死んだとか、祈ってもらったからよくなった、などと説明する考え方である。マイヤーは、この考えを推しすすめて、現在問題となっている心と身体の問題を解く、一つの鍵として、この同時性の考えが役立つのではないかといっている。すなわち、心理的問題があるから身体が害された、とか、身体が害されたから心の状態が悪くなったというように、因果律的に把握しようとしないことによって、精神身体医学（psychosomatic medicine）の現象を解明しようするのである（もちろん、なかには、因果律的な方法によって説明しうる現象もあるのは当然である）。（277ページ）
人は、よくわからない状態はイヤなので、それを「科学的な纏いを装って」説明しようする傾向があるようです。まだ「科学的に証明されていない」にもかかわらず、それをさも「科学である」と強弁（偽科学）する態度が、がまかり通っていることを河合さんは指摘しているのです。
もっとも、なぜかはわかりませんが、多くの人は「同時性」的な現象を体験していると思われます。河合さんは「待つ」ことをとても大切にします。「科学」も発展する動態です。ひょっとして「共時性」も、科学として証明される日が来るのかもしれませんね。
河合さんは、C,A.マイヤーの言葉を借りて、「因果律的に把握しようとしないこと」の重要性を語ります。私たちコーチが、実際のコーチングセッションで、クライアントの語る言葉に、腹落ちできる理解や共感ができないこともあるでしょう。でも、河合さんが語るように、無理やり理解しようとするのではなく、「その状態をそのまま受けとめる」ことの大切さが伝わってきます。
「待つ」ことによって、何かが生まれてくることもコーチングの素晴らしさですから。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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