「境界」とは危険に満ちた「領域」である!?

私たちは、何かの現象を説明する場合に、自明のごとく「近代科学のパラダイム」を用いているようです。河合隼雄さんの『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』を読み進めていくと、「思想家としての河合さん」が現れてきます。前回のキーワード解説…「境界領域」をさらに発展させた「境界への挑戦」には、「近代科学のパラダイム」を超越しようとする、河合さんのオリジナリティ溢れる思想が語られます。

近代科学の根本原則とされている、明快な領域を区分する「線」としてみられてきた「境界」を、「領域」として見直し、その領域の探求に挑戦してゆくことが必要である、と河合さんは訴えます。
まだ解明されていない「不可思議な現象を理論化しようとして一番失敗する」のは、「そのような現象をデカルト=ニュートン的パラダイムに入れ込んで説明する、あるいは“科学的事実”であることを確かめられた、と考えることである」と指摘し、「これまでの近代科学のパラダイムを離れて新しい現象を探索しながら、それを正しいと言うために、古いパラダイムに頼るのだから矛盾している」と語ります。

ある不可思議な現象、例えば夢によって未来の事実を知ったとか、祈りによって不治の病気が治ったとか、それらを基礎にして「理論」をつくり、それを絶対真であると主張しはじめると、それは科学というよりも宗教になってしまう。改変の可能な「仮説」ではなく、絶対性をもった「教義」にそれがなってしまうからである。そして、その教義の真であることを守るために前節で述べた、分裂や拒否の機制を用いることになりがちになる。(235ページ)

私たちは、ともすれば二分法的な言質で語ることが多いことに気づかされます。河合さんは、「欧米において、ヨガや禅などに対する関心が大いに高まっていることは周知のとおりである」とコメントした後、次のように続けます。

しかし、そのときに西洋は駄目で東洋はすばらしい式の単純な断定を下さないことが必要である。なかには西洋は物質主義で日本は精神を大切にするなどと、まったくのナンセンスなことを主張して、物が豊かになって人間が物質によってスポイルされているとき、日本の精神尊重の態度が役立つだろう、とまで言い出す人もある。(236ページ)

河合さんは「領域」を語ることの困難さを受けとめつつ、それでも「境界」に挑戦していくことに込められた意義を熱く語ります。

分裂もせず拒否もせず、境界の現実を見すえることは、困難極まりないことである。しかし、このことをやり抜いてゆくことが、現代に生きることではなかろうか。そのような困難な課題を背負って生き抜いているうちに、何とか新しいパラダイムが見えてくることと思われる。それまでは、ともかく事実を集積していくことが大切であろう。それが、これまでの「科学」の常識を破るものであっても、ともかく事実は事実として認め、それに単純な理論づけを行なうことなく見ていると、何か新しい手がかりが見出せることであろう。既に述べてきたように、境界というところは余程の慎重さをもって進んでゆかないと、すぐに足をすくわれてしまう。危険に満ちた「領域」なのである。(236ページ)


コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。

This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.

認定コーチ紹介サービス
ホームページ制作サービス
Certified Coach Referral Service
Web Site Creation Service