フランクルは次のような言葉を残しています。
自己実現は目標として設定されるものではなく、私が人間的実存の「自己超越」と呼ぶところのものの副次的結果として生じるものなのです。(中略)自己実現の代表的主張者であるアブラハム・マズロー(Abraham H.Maslow,1908-1970.アメリカの心理学者)も同様の見解を表明しています。「自己実現を直接的に追及する人々は、人生の使命から切り離されで、実際に自己実現を達成することはないというフランクルの経験は私のそれに一致する」
(『意味への意志』14ページ)
「動機付け」に関する研究は、さまざまな広がりを持つ分野です。そのなかで必ず取り上げられるのが、「マズローの欲求5段階説」です。最も高次の段階を「自己実現の欲求(self-actualization)」と名付け、人はそこに向かって自ら成長しようとする欲求を持っている、とマズローは言うのです。
フランクルは、その「自己実現の欲求」を「ロゴセラピー」で紐解きます。
こうした自己超越という観点、つまり、人間は自己自身を超えて充たされるべき意味に達する…それにはまず意味が発見されねばなりませんが…という根本的な事実の重要さを説明するために、私はいつも「意味への意志」という動機付け理論の概念を用いてきました。(中略)マズロー自身も、意味への意志を人間の根本的な願望とみなすと強調し、こう述べています。「私は、人間の主要な関心は意味への意志であるとするフランクルに全く同感である」。
(同15ページ)
「意味への意志」とは「人間は意味を求める存在である」と捉える、フランクルの創始したロゴセラピーの中心概念です。フランクル自身は、これを「動機付け理論」と呼称しています。マズローもこの概念に影響を受けていることを少し誇らかな口ぶりで語るのですね。
「幸福とは?」について、以前のキーワード解説で取り上げています。「幸福とは結果としてついてくるものであり、幸福という意味(根拠)を見出すことで幸福感は訪れる」と、フランクルは語ります。
今回の、冒頭で引用したフランクルの言葉である、「自己実現は目標として設定されるものではなく、私が人間的実存の“自己超越”と呼ぶところのものの副次的結果として生じるものなのです」は、まさに相似形の表現となっています。
ただ、フランクルは、「自己超越」を「自己実現」より上位の「意味」として提示していることに注目です。このことをマズローも受けとめています。
「欲求5段階説」は、現代でもそのまま定着した理論ですが、実はマズロー自身が晩年、最上位の「自己実現の欲求」の上に「自己超越の欲求」を加えることを提案しているのです。
マズローは、ロジャーズらとともに、それまで主流を占めていた心理学の「精神分析」、「行動主義」に対して「人間性心理学」という第三の心理学を提唱しています。そして今日の臨床心理学、カウンセリングにおいて、理論的バックボーンともいえる分野となっているのです。
フランクルに関わるキーワードを5回にわたって解説してきました。コーチングを深く探求していくと、その先に、解像度を増したフランクルの姿が見えてくるようです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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