
(中沢)
たとえば先生が言ったことに対して、クライアントが「違うんです」と反対したときは、どうされるんですか。別のほうから攻めるんですか。
(河合)
僕はね、自分の意見を言うということはめったにないです。(中略)
それと「あなたはこうだ」というふうな言い方はほとんどしないんじゃないでしょうか。そうした場合、大体「否定」されますね。……
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』の第4章<仏教と「違うんです」>の2番目の見出し<臨床心理学者は「否定」にどのように向き合うのか>のなかで、中沢さんの質問に河合さんは応えます。
臨床心理学者(カウンセラー)の河合さんが接するクライアントは、コーチングと異なり精神的な病を抱えている人(視点を変えると「繊細な人」)が中心です。河合さんが臨床心理学の道を歩み始め、最初に学んだのは「ロールシャッハ・テスト」なのですが(ユング派心理学はそれよりも後となります)、「とても面白い体験をしたんです」と語る、そのエピソードとは…
(河合)
……「ロールシャッハ・テスト」というのがあるでしょう。インキのシミみたいなものを見せて「何に見えますか」と聞く。そうすると「顔に見えます」とか何か反応する。何を言ってもええわけですから。ところが見るなり「こんなもん、コウモリには見えしまへんでえ!」って言うたりする(笑)。「何で見えへんの」と聞くと、「ここに胴があるじゃないですか。羽もあるじゃないですか。でも、ちょっと羽がおかしいし、胴がおかしい。だからコウモリには見えしまへん」と言うわけです(笑)。
中沢さんは、すぐさまツッコミます。
…でも、逆に言うと、「どうみてもコウモリ」じゃないですか…と(笑)。
(河合)
だから「どうみてもコウモリ」に見えている。一般の人は、その「コウモリらしきもの」を「コウモリです」と言うてるわけです。でも、その人は「コウモリらしきもの」を「コウモリ」と言うのは絶対いやだから、まず一度コウモリの肯定があって、そうした段階を経た上で「否定」の方を先に言う。コウモリらしいけども、コウモリではあり得ない。その「否定」の力というのは、何かのときに強く「否定」してしまうのに似てる。
このような人に接した場合、多くの人は「ひねくれ者」、今ふうに表現すると「めんどくさい人」とレッテルを張るかもしれませんね。ところが、臨床心理学者の河合さんは異なります。コーチングにもつながっていくコメントが語られます。無意識の「押しつけ」と「レッテル張り」です。
(河合)
これは日常的に誰もがよくやっていることで、「この子は非行少年です」なんていうのは完全な押しつけでしょう。世の中に非行少年なんて絶対にいないんですよ。それぞれが個性を持った異なる存在なのですが、そこに「非行少年」というレッテルを張ってくるわけでしょう。「そんなものじゃないよ―ッ」と言いたくもなる。いつもレッテルを張られてきたという怒りがあると思いますね。
中沢さんは河合さんの指摘に強く同意します。この見出しの最後に交わされるお二人の対話を引用し、次回は<ブッダの「否定」>に移ります。「否定」の探求は、さらに深みを増していくのです。
(中沢)
その怒りはとてもよく理解できます。むしろ僕が子どもの頃からまったく理解できなかったのは、そんなレッテル張られて、自分はそんなものじゃないはずなのに、抵抗もなく受け入れる子どものほうが多いでしょう。
(河合)
多い、多い。
(中沢)
反発すら抱かないで生きていけるという心理の構造が僕には謎でした。いいトシこいても、まだ謎なんですよ、それが(笑)。
(河合)
いや、それは謎ですよ。本当に人間というものの謎です。しかも自分でそういうレッテルを張ったりしているんですからね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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