河合隼雄さんのエッセイ集である『こころの処方箋』の52番目のタイトルは、「精神的なものが精神を覆い隠す」です。
河合さんは、1ページ目の最後あたりで「高校野球」を取り巻く象徴的な条件について、明確な批判の眼差しでコメントします。
純真な球児などというイメージを誰が売りものにし出したのか知らないが、それを保持するために「連帯責任」という陰湿な方法によることになる。ある生徒が非行をしたといって、その学校の生徒たちが野球に出場できない、というのがどうして教育的か。その非行を行なった生徒を野球部に入部させ、皆で大いに頑張ることになる方が教育的のように思われるのだが。
「精神的なもの」に関する河合さんの思念は、筋金入りのようです。
「指導者の人達が、自分の責任を棚に上げにして生徒たちにのみ押しつける“精神力”には感服させられるが、それは私がかつて高校野球のシーンをみて感じた精神の輝きとは別種のものである」、と、珍しく皮肉を交えてのコメントも登場します。
そして、以前のエッセイで「ソウル・メーキング」を書いたことに触れ、「心、魂、精神などということには深い関心をもっている」と、語ります。
後半になると、このエッセイタイトルは「白洲正子『いまなぜ青山二郎なのか』(新潮社刊)のなかに、青山二郎の言葉として紹介されていたものである」、と明らかにし、河合さんの思いが広がっていきます。
もし「精神」などというものがあるなら、それは何らかの形として顕れているはずだ。それを見たり、それに触れたりしてこそわかるのに、「精神的」なことをとやかく言うので、それが「精神」を覆い隠してしまう、と青山二郎は嘆くのである。
河合さんは、この「精神的」にインスパイアを得て、「〇〇的」のように「的」を使った場合と、使われないそのままの表現との違いに着目します。
この言葉はなかなか素晴らしいもので、「〇〇的なものが、〇〇を覆い隠す」というようにして応用すると、いろいろなところに使えると思えるのである。たとえば、われわれは自分が「西洋的」と思うことを学んだり、真似をしたりしているが、それは真の「西洋」の姿を覆い隠すことになっていないだろうか。逆に、これで「日本的」というようなことを外国に売り出して、それによって真の日本の姿を覆い隠すようなことをしていないだろうか。こんなことを考えると、われわれは今や周囲を「テキ」に囲まれて生きているような錯覚さえ生じてくるのである。
今回は、コーチングに敷衍するというより、この52番目のエッセイの内容を、ところどころチョイスし引用するばかりだな…と、感じてきました。ここで「テキ」が登場する訳ですが、河合さんが大好きなダジャレであることを付記しておきます。
「的」・「テキ」・「敵」から、冴えた河合さんのリフレーミングとなります。実際のコーチングセッションで、このような「言葉遊び」をしているうちに、思いがけない「気づき」につながっていくこともありそうですね。
つまり、人間はこのような「テキ」に囲まれて襲われるのではなく、このような「テキ」を防壁として用いることによって、安心して生きているのではないかということである。
前半で、高校野球に関する解説や評論などが「精神的」という言葉を使いすぎる、とストレートに批判している河合さでしたが、エッセイの最後になると、いつの間にか、その視点は、「柔らかい眼差し」に転じてしまいました(笑)
コーチング「的」な、リフレーミングの効果が存分に発揮されたエッセイでした。この「的」は「テキ」ではなく「適」として肯定的に捉えています(笑)
精神の直接体験は人間には荷が重すぎる。あるいは衝撃が強すぎる。そこで「精神的」な言辞を用いることによって、自分を守ろうとするのだ。「精神的」解説に酔うことによって、精神に触れたときのショックを緩和しようというわけである。このように考えると、精神的解説にはメクジラ立てて怒ることはないし、あれは保健衛生上の価値の高いものとも思えてくる。ただし、それを「精神」と錯覚しないことは必要であろう。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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