「<語る/聴く>のなかの共犯関係」に陥ることのないよう心がけたい

「聴き入る」というのは「羅針盤なしで航海する」ような危うさをともなういとなみで、「あまりにも不確実なので、偽りの海図や羅針盤にだまされそうになったりする」。では、「聴き入る」というときの「入る」はどこに入ることなのか。それを河合氏は、「クライアントと治療者の間の何らかのポイントX」というふうに表現している。

臨床とことば』第4章5番目の見出し、「<語る/聴く>のなかの共犯関係」について、コーチングの解説を試みています。前回は、その半ばあたりを引用し、解説をスタートしました。再掲します。

ことばは、かたちを求めてうごめくものにかたちを与える。ことばがかたちとなって、かたちなきものが固められる。「語る」とは自己の記述のしなおしであるかぎり、そこにどうしても「騙(かた)る」という契機が忍び込まざるをえない。

ここは、自分の内面を覗き込んで、その思うところを“正直”に「語っている」と本人が感じていたとしても、実は「騙(かた)っている」場合が多い、と鷲田さんが指摘している箇所です。
冒頭の引用は、後半になって登場するパラグラフなのですが、なぜ「語っているようで騙ってしまっている」ことが多いのか… 鷲田さんは、河合さんの論考の中にある「ポイントX」に注目し、その解明に挑みます。少し難解な表現ですが、引用してみましょう。

ポイントXとは、クライアントと治療者のいずれも見えないものである。そしてそれはすぐに、「妄想」へと転落しうるものである。(中略)
それだけではない。「Xを見出すことに焦ると、なかなか『聴き入る』ことができなくなる」(前掲論文)し、中途半端な「理解」や「解釈」はXへの途をかえって塞いでしまう。「聴き入る」ことのむずかしさについて、河合氏はそのように言う。聴く、受けとめるということがそのまま逸らすということに転じてしまうむずかしさについて、である。

コーチングは、何らかの理由によってクライアントが意識することを拒み、内面(無意識)に留めたままの「思念」を、クライアントが自らの力によって、意識に浮上させ(これが「気づき」です)、それを原動力に、クライアントが目指すゴールに向かっていくことをサポートします。

クライアントが「今私は気づきを得ました…」と言葉にすることで、コーチもそのことを受けとめます。コーチは、クライアントが「その言葉」を発してくれることで「満足感を得る」ということもあるでしょう。ただし、河合さんが、そして鷲田さんが語るように、その「気づきの言葉」はクライアントが無意識に「騙っている」場合が多いことを、私たちプロコーチは心しておく必要があります。

人は、自分にとって都合のよい『物語(ナラティブ)』を生み出します。そこに逃げ込むこともあります。河合さんはそのことを、「妄想の世界にとらわれ身動きできなくなったりする」と表現します。
「聴き入る」ことは本当にむずかしい。私たちプロコーチは、「<語る/聴く>のなかの共犯関係」に陥ることのないよう、クライアントの「気づきの言葉」を安直に受けとめるのではなく、「真の気づき(awareness)」なのか否かを判断する能力の獲得を目指し、「五感」を磨き続けていくことが求められるのです。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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