『生きるとは、自分の物語をつくること』の11番目の見出しは「多神教の日本で生まれた『源氏物語』」です。
河合さんは、一神教であるキリスト教と多神教の違いを紐解きます。日本は多神教であったからこそ、紫式部が『源氏物語』を著すことが出来た、と河合さんは指摘します。『源氏物語』の素晴らしさを語る内容は、さまざま存在しますが、河合さんはユニークです。河合さんの語りに耳を澄ましていると、いつのまにか目の前に紫式部の姿が現れてくるようです。
今回は、平安時代にタイムスリップしてみようと思います。
(河合)
『源氏物語』は個人が書いた物語ですね。僕の考えでは、一神教では神の力があまりに強いから、人間は神の創りたもうた物語を生きるんですよ。
(小川)
神様が、人間が生きていくための物語を、あらかじめ書いて下さっているということですね。
(河合)
そうそう。人間のくせに物語をいじったりしたらいかんわけです。キリスト教なら聖書があるわけだから、それ以外の物語を作ってはいけない。初期の頃の修道院で、修道女の人たちが、面白い夢を見ると書き残したり、物語を作ろうとしていたらしい。ところがみんな潰されているんです。当時の考えだと、瀆神的となるわけです。(中略)
それほど、向こうでは一人の神様の力が強いから、人間が個人で物語を書くなんてことは許されなかった。ところが日本のような多神教の世界はそうじゃないでしょ。いろんな物語があるわけだから。どれだけ人間が書いたってかまわない。
(小川)
しかも女性が。
(河合)
いや、僕は、女性だから書けたと考えています。なぜかというと、それぞれの時代にはその時代のスタンダードな物語があって、その物語は、男のためのものだったから。
ここから、河合さんの語りはドライブがかかります。平安時代におけるスタンダードな「男(特に殿上人)の物語」です。そのあたりは割愛させていただきます。そして紫式部が登場します。
(河合)
…… ところが、紫式部は身分としてそのスタンダードには乗れない立場なわけです。だけど、経済的な心配はない。財力がある、というのは、大事なことです。そして平仮名がある。こういう条件の中で最初の物語が出来たというのが、僕の考えなんです。あの頃は、男は文章は全部漢文で書いていましたからね。
筆者の手元に、NHK大河ドラマ『光る君へ』の時代考証を担当している、国際日本文化センター倉本一宏教授の『紫式部と藤原道長(講談社現代新書)』があります。「はじめに」の中ほどに次のコメントが綴られています。
この二人(紫式部と道長 : 筆者補記)を並列的に考えていくことによって、当時の政治情勢や後宮情勢が、『源氏物語』という世界最高の文学を生み出したこと、ひいては日本史上最盛期の文化を形成したことを、実感できるのではないだろうか。
倉本教授は「この本では、出来る限り無責任な推測は避け、確実な史実と思われることだけを提示していきたい」、と述べています。複雑な系図の紹介もあり、読み進めるにはエネルギーも必要ですが、この本を読むと、河合さんが捉える「平安貴族(男)には出世していくという物語があった。特に殿上人は、次の正月に自分が何の位になるかっていうことが最大の関心事で、それに乗って生きてきた。男はみんなそうやって生きていたから、自分で(物語を: 筆者補記)作る必要がなかった」ということが、とてもリアルに感じられます。
『源氏物語』を読み込んでいるお二人の対話は、とても深い! インスパイアは連鎖し、紫式部の『源氏物語』に込めた「想い」に像が結ばれます。文学のプロフェッショナルであるお二人に、深い「共感」が生まれたセッションとなりました。
(小川)
『源氏物語』では、光源氏の存在感は、物語が進むにつれだんだん小さくなって、光はむしろ女性の方を際立たせるためのもので、彼は狂言回し的な役になってきますね。
(河合)
そういう「光」を当てる役なんです。
(小川)
なるほど、光は自分にではなくて、女性に当てるということですね。
(河合)
そうです。僕に言わせると、女性たちは全て紫式部の分身なんですね。その光の当て役として光源氏がいる。確かに彼は光り輝いています。姿は美しく、文章を作っても上手く、絵を描いても上手い。分身たちの美点を描くためには、それらが全部出来る人でないとならん。あんな男が実在するはずがないわけですが、光の当て役としては素晴らしい。『源氏』には、女性がものすごくうまく書かれていますね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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