『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』は「自我」について、河合隼雄さんはユングがそれに加えて「自己(self)」という概念を提示したことを解説します。
自我が確立するためには、それはそれなりに統合性を持たねばならない。その内部に大きい矛盾が存在すると、それは自立的に機能しなくなる。ところで、自我がその無矛盾性を強く打ち出すと、それは勢い一面的にならざるを得ない。つまり、自我と矛盾する傾向を外に排除してしまうからである。それがあまりにも極端化すると、自我から排除された心的内容が集まって一種の人格性を持ちはじめ、それは二重人格の症状として顕現してくる。
十九世紀後半より二十世紀初頭にかけて、二重人格の症例が多く発見され、発表された。ユングの卓見は、非常に早くからこのような現象を病的な側面から見るのではなく、そこに目的論的な意義を見出そうとしたことである。
彼は1902年に出版した博士論文において、二重人格の現象が、あまりにも一面化された自我を補償し、全体性を求める人間の心の働きとして生じてきたと考えられる点を指摘している。人間の心全体は自我を超えたはたらきをしているとしている。ユングはその後ますますこのような考えを発展せしめ、東洋の考えの影響も受けて、自我が意識の統合の中心であるのに対して、人間の心全体、つまり、意識も無意識も含めた全体の中心として、自己というものが存在すると仮定するようになった。
この「自己」は、ユングに特有な概念であり、その説明に河合さんも苦労していることが伺われます。そこで河合さんは、エリクソンが提唱した「アイデンティティ」を援用し、類似性を語ります。
アイデンティティとは、自分自身の単一性、連続性、普遍性を意味するが、この語はそれほど明確ではなく、「自分であること」、「自分らしさ」、「真の自分」などといった感じを持っているのである。ユングの「自己」も概念的にはあいまいな語であるが、エリクソンのアイデンティティも同様である。彼らはむしろそんなことはよく知っており、このようなあいまいな用語によってこそ、人間の心の様相をうまく把握できると考えているのである。
河合さんは、ここから「自己」について、さらに深めていくのですが、ユングもエリクソンも「人間の心の様相とは、〇〇〇である!」と、断定することを避けています。河合さんはそこに共感を得ていることが伝わってきます。
人は、さまざまな現象に対して「わかりたい」という願望をもちます。あいまいなままにとどまっている状態がイヤなのですね。「こころの様相」についても同様です。“科学”だと自認し、その視点で「こころ」を構造として説明したのがフロイトです。
当時、フロイトの「わかりやすさ」が大いに持て囃され、人気を博しました。その後、ロジャーズの登場により、権威として屹立していた「フロイトの精神分析」がその地位を失っていったことは説明したとおりです。
ユングとエリクソン、そして河合さんのスタンスは、コーチングの本質を語るうえで、重要な示唆を与えてくれている、と感じています。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.