
(河合)
…… それからもう一つの要因は、いわゆる近代科学そのものも、もう変わっていかないといけない、と最近だんだん気がつき出したことです。変わっていかなければならないのに、文科系の人たちが「科学的」と呼ぶときは、近代科学だけなんです。
(中沢)
まだ「デカルト」に誤爆を続けてますねえ。
(河合)
そんなこと、本当にばかげている。僕らはそこを何とか乗り越えることを考えねばならない、そういう義務がある。その使命感が非常に強いです。そう考えると、仏教は、案外鍵を握っているのではないかと考え出したんです。……
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』の最終章(6回目の対談)<大日如来の吐息…科学について>の最初の見出し<戦争体験から科学へ>にある対話です。
これまでの5回の対談と、河合さんが全く異なるスタンスで臨んでいることを、中沢さんは…「どうかなさったんですか、きょうはやけに雄弁な切り出しなのでびっくりしました(笑)」…と、驚きを込めて河合さんにフィードバックしています。
冒頭の引用なのですが、中沢さんが河合さんの熱い語りを少し和らげようと…まだ「デカルト」に誤爆を続けていますねえ…と、「中沢流」ウイットを挟みます。いつもの河合さんであれば、ウイットを受けて「河合流」ユーモア(多くは駄洒落です…笑)を返すのですが、その言葉に反応することなくスルーしています。河合さんは…「そういう義務がある」…という強い口調です。
中沢さんのウイットに込めた「含意」は…「近代科学」の問題点は、単にデカルト的二元論(心と物、主観と客観の分離)に還元できるものではない…という指摘であると筆者は受けとめました。デカルトについては、<デカルトとスピノザの「神」の捉え方を少しだけ語ってみました>というタイトルで解説しています。一読いただくと幸甚です。
大学までバリバリの理系であったお二人が、河合さんは「臨床心理学者」に、中沢さんは「宗教人類学者」に転向され、ここからお二人がリベラルアーツを探求し、実践されてきたことを前回紹介しています。
もっとも、ここでの対話を読み込むと、「リベラルアーツへの想い」に温度差があることに気づきました。「河合さんの想い」には中沢さんにない「執念」がある。その背景には何があるのだろうか…と考えるうちに“あること”が想起されたのです。
戦時中の日本が「精神論」という非合理的な教育に傾斜する中で、その環境に適応できない河合少年は孤独と恐怖を感じる「臆病な少年」でした。この「コーチング大百科」で“そのこと”を取り上げています。<「耐える」は、「精神」のはたらきを貧困にし、没個性的にしていく…>です。
河合さんが少年の頃を振り返って、まわりが死ぬことを恐れない「軍国少年」ばかりなのに、自分は軍隊に入って死ぬことが怖くてしょうがなかったことを、学術書で自己開示しています。再掲します。
困ったことに私の死に対する恐怖は一向に弱まらず、自分が死ぬことも人を殺すことも嫌であり、軍人になりたいと思えないのです。死ぬのが怖いから軍人になれないなどというのは、まったく臆病なことで、誰にも言うことができません。中学生の級友がお国のために死ぬと言って陸軍や海軍の学校に入っていくのを尊敬の目で見ていましたが、自分はその気になれません。われながら自分の弱さに困ってしまって、とうとう医学部の学生であった一番上の兄に手紙を書きました。
長兄からの手紙はすぐに届きます。河合さんは救われます。河合さんにとって長兄は、すべてを受容してくれる“ほんとうのコーチ”でした。筆者は感動と伴に思い出しています。
この手紙で私にとって一番印象的だったのは、「父も悟ってなどいない」と言明してあるところでした。あれほど泰然とし、何も恐れていないように見える父でも悟ってはいず、死ということは一生かかって追求するべき課題だと書かれているのを見て、自分を臆病者として卑下していた気持ちが消えていくのを感じました。そして、実際に兄の言ったことは本当で、私はこの年齢になっても死ぬのは怖いし、悟りなどというのをまったく経験したことはありません。ただ、死という課題を一生かけて考えてゆこうとする姿勢は今も変わりなくもっています。
「世界的臨床心理学者の河合隼雄」という人物がつくられていく「原点」は、この「少年時代」にあった! 河合さんの「執念の源泉」ですね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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