「禅から見れば、人間はこの意味で言葉の奴隷です」…その意味とは?

人間は喋っているうちに意識しないで、習慣の力で、つい自分の喋る言語の意味的枠組みに従ってものを見、ものを考えるようになっていく。禅から見れば、人間はこの意味で言葉の奴隷です。自由に、なまの、無制約の「現実」に触れることなど到底できないのです。自分の生れついた言語によって規定された線に従って考え、行動するだけです。
言語によって決定された意味的範疇の枠組みから抜け出すことが、禅に言わせれば、先ず第一にやらなければならないことであります。言語の区分け形式によって歪められた「現実」の姿を、言語ぬきの、新鮮で溌剌とした直接のヴィジョンで置きかえなければならないのです。

井筒俊彦さんの『意識と本質』の「対話と非対話~禅問答についての一考察」を取り上げ、コーチングを語る4回目です。
前回の最後で、「その言語が意味論的に押しつけてくる特別な『現実』の範疇化の枠に心の動きがはまってしまう…」という、少し難解な井筒さんの言葉を引用しましたが、その後で、少しかみ砕いて、その「意味」を説明しているところを引用してみました。

ホメイニ師をリーダーとするイスラム革命が起こる前年の1977年に、イランのテヘランで実施されたシンポジウムで、井筒さんは講演しています。土地柄もあって、参加者の多くはイスラム教信者だと想像します。そこで井筒さんは「言葉を超える禅」について、英語で紐解いているのですね。
英語の講演タイトルは「BEYOND DIALOGUE~A ZEN Point of View」です。『意識と本質』に収められているのは、井筒さん自らが日本語に訳した内容です。

井筒さんは、『コーラン』の全編を日本語に翻訳しています。読んで感じたのは、その言語(神であるアッラーの言葉)に、曖昧さがないのです。どこまでも具体的です。井筒さんを紹介するWikipediaの「概要」の書き出しは…

語学の天才と称され、大部分の著作が英文で書かれていることもあり、日本国内でよりも、欧米において高く評価されている。アラビア語、ペルシャ語、サンスクリット語、パーリ語、ロシア語、ギリシャ語などの30以上の言語を流暢に操り……

と、あるように、世界のさまざまな言語の構造を知り抜いたうえで、“日本語だから”昇華しうる「対話としての禅問答」の意味を、紐解いているのですね。

井筒さんによって「言語」は極めて窮屈なものであることが理解されます。私たちは、言葉によって操作された「非現実」を「現実」と思い込まされ行動している、と。
井筒さんは……言語的区分けがすっかり取り払われたところに、今申しました直接的ヴィジョンにおいて現れてくる「現実」は完全な形而上的無限定者でなければなりません……と、「ほんとうの現実」を語ります。

「形而上的無限定者」は難解な表現ですね。便利なツールである「言語」から完全に解き放たれたところに訪れる「直観的なヴィジョン」…「禅問答」とは「言葉から解き放たれた言葉による対話」…と筆者は理解しました。

そしてこういう状態が実現したとき、そのコンテクストにおいて禅は「山は山でない」などと申します。今「山」として言語的に区分けされているものを、もとの本源的な絶対無限定に引き戻すからです。絶対無限定性に引き戻された「山」はもはや「山」ではありません。空です。「非山」です。「山」がこういうふうに「非山」として見られること、というよりも「非山」として体験されることがあってはじめて禅なるものが成立するのです。

井筒さんによって「禅問答」が解き明かされていきます。頭がしびれてきました(笑)。ただ、少しずつですが、6月25日に公開した、「『仏教』って何?」で、中沢新一さんが井筒さんを語る「言葉の意味」がつながってきました。再掲します。

…… そのうちあれよあれよという間に、『大乗起進論』という本にいたる。そこではもう仏教もイスラム教もユダヤ教もキリスト教も、ありとあらゆる宗教が井筒先生の思考のるつぼのなかで合流して、そこでどの宗教でも単独では歴史のなかで実現できなかった、宗教の夢みたいなものが出現するようになっています。

「何が書いてあるのかよくわからないのだけど、それでもスゴイことが書かれているように感じるので、とにかくわかりたい」というモチベーションを頼りに動いていると、ちょっとずつですが、「わかりたい」内容が「わかってくる」、と「気づかされます」。この感覚は、コーチングを通じて体感できる「気づき」と、とても似ている。今このときの、筆者の実感です。
次回も引き続き、井筒俊彦さんを感じてみようと思います。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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