日本人の「多様性」は、「統合」ではなく「調和の感性」が優位に立つ

(河合)
……日本人には、調和の感覚は美的感覚としてありますわね。日本人は倫理観という場合、美的感覚がすごく大事になってくるじゃないですか。向こうは一神教でしょう。だからやはりインテグレーションと言いたいし、どこかに一なるものがあるんですよ。一なるものまで統合されていく。こちらの場合は一なるものがなくて、いろいろあるんだけど、ハーモニーがある。だから僕はそのハーモニーの感覚を身につけて生きていく、これがいいんじゃないかと思っているんですけどね。

臨床とことば』の第2章「聴くことの重さ」の4番目の見出しは、「カギは“調和”の感覚」です。河合隼雄さんと鷲田清一さんが「多様性とは?」について、見解を述べます。まずは、鷲田さんが口火を切ります。
その語りは1ページにわたって展開されるのですが、その終わりで、「……多様性というのは大事ですけど、多重人格というと統一性を繋ぐものがなくなって、非常に苦しいというのはわかるんですけども、多様性ということを本当に言い出すとすれば、その方がいいんだという言い方もできるものなんでしょうか?」と、“意味”を突き詰めることを生業とする「哲学者」が、多重人格に深い造詣を有する「心理療法家」に質問します。

(河合)
それは、これからの、あらゆるところにある、すごく大きな疑問じゃないでしょうか。私にとってもすごく大きな問題です。ずっと考えていることです。まず多重人格の方ですが、実際本当に大変です。多重人格の特徴は、お互いに関係がない。あるいは、一方だけ知っている。二重人格の場合はわかりやすいですけど、不思議なことに第一人格はよい人格で、第二人格はわるい人格です。……

河合さんも同じく、1ページにわたって、臨床経験も踏まえた「多重人格」についての知見を開示します。「多重人格」は、一人の人間にもかかわらず、複数の人格が併存し、それぞれが統合されていない状態です。河合さんは、データは示していませんが、日本人の「多重人格」が、西洋と比べて圧倒的に少ない現象を、「西洋人は多様をインテグレートすることを考えるからではないか」と、輪郭化させていきます。

冒頭の引用は、「日本人の場合は、多様を統合(インテグレート)ではなく、調和(ハーモニー)させようとする感性(河合さんは美的感覚と捉えます)の方が優位に立つ」という根拠を、河合さんが語るシーンです。
「日本的なコーチングとは何か?」を思考し続けている「CBLコーチング情報局」は、その解を「異質の調和」として見出していますから、河合さんのこの言葉は、強い援軍として感得しました。

河合さんの語りにインスパイアした鷲田さんは、宗教、政治集団、国家論、そして「共同体」について、「哲学者」としての視点を開示します。両者にケミストリーが起こります。
第2章「聴くことの重さ」は49ページで構成され、7つの見出しが配されています。その4番目の「カギは“調和”の感覚」は、10ページに及んでいますから、いかに白熱した対話が繰り広げられたのか…筆者はしかと受けとめました。
全てを引用したいところですが、鷲田さんの想い(ちょっと長めの語り)と、それを受けとめた河合さんの「“調和”の感覚」を引用して、今回の「コーチング解説」を終えることにします。

(鷲田)
人間というのは、いい加減というのが大事ですよね。何かあったとき、それと突っ張らずに一体化したら、ものすごく危ないんですよね。たとえば人間には、憎いけれども好きだとか、アンビバレントな矛盾した感情があることが、ある意味でリアルな感覚の根本にあると思うんですよ。よく言うんですけど、人間は皆自分を探していると。でも正直なところ、本当に皆自分なんかになりたいのかと思う。自分になりたいけど、自分でなくなりたくないという、正反対の感情に魅力を感じますし、あの人が持っているからほしい、でもあの人が持ってるからほしくない。モードもそうですね。対立するもの、矛盾するものを持ちえてるというのが、人として生きえていることだと思うんです。いい加減で両方持っているときに、二者択一でどちらかというふうに分裂してしまうと、苦しいことになりますね。
だから、なぜ、いい加減はよい加減なのか。いい加減、悪い加減の、加減の範囲はどういうところにあるんでしょうか。
(河合)
それは、調和の感覚というか、そういうのを鍛えて各人が持つべきではないか、と思います。だから、教条的な教養とでも言うか、それにしたがって生きているのではなくて、自分の持っている調和感覚を鍛えて生きていかないと。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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