
(中沢)
世界を分類したり、秩序づけたりする思考が一方にあり、もう一方には秩序を突き動かしながら流動していくものに身をまかせていく忘我のトランスがあり、その二つはどちらも人間の心に最初からセットしてあったもので、この二つの間に均衡をつくり出すことが文化の働きであったわけです。
(河合)
それね、シャーマニズムでも「ちょっと見ている」ということはないんですか。
(中沢)
「ちょっと見ている」……。
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』の第1章「仏教への帰還」の7番目の見出し…「野生の思考」と同居するシャーマニズム…の書き出しを引用しています。ここでの中沢さんの語りに筆者は強く啓発されました。
「文化」というポピュラーなワードは、さまざまなシーンで使われます。私たちも、力むことなく、日常会話でこの言葉を多用しています。中沢さんは、その文化を「秩序」と「忘我」の均衡を保つ働きとして捉えているのですね。
「秩序」と「忘我」は、対極です。でも人間はその両方を併せ持っている。人間の心に宿る本質、と言ってもよいでしょう。ただし、二つのベクトルは遠心力そのものです。この両者を調整するのが「文化」である、と。「なるほど!」です。
この「コーチング大百科」に貫かれているコンセプトは「異質の調和」ですから、筆者は改めて、中沢さんの「言葉」に力をいただきました。
ところで、河合さんの「ちょっと見ている」という発言ですが、中沢さんは質問の意味が掴めなかったようで、「?」が点滅します。読者のみなさんも、河合さんの意図を類推してみてください。続きを引用します。
(河合)
自分を見ている。完全に忘我になったら、やはりシャーマンとしては危ない……。
(中沢)
戻ってきますよね。
(河合)
戻ってくるということは、やはり自分の中で自分をちょっと見ているやつがいるんじゃないかと思うんです。
(中沢)
ちょっと見ていると思います。それは、たとえば先生がご覧になったアメリカ先住民のシャーマンの場合は、完全にそうじゃないかしら。
(河合)
僕はそう思うんですよ。
臨床心理学者の河合さんは、心の安定が維持できないクライアントに寄り添います。健常な人には理解の及ばない精神状況に陥っているクライアントは、その苦しみを訴えます。河合さんは「傾聴」で臨み、「共感」します。ただし…
「心にかかわるプロフェッショナル」である河合さんは、ただ「共感」するのではなく、「適切な距離」を保ちつつ臨んでいるのです。河合さんには、「自分の中で自分をちょっと見ているもうひとりの自分」が存在するのですね。ですから、プロでもある「シャーマン」の心の中に分け入ってみようと考え、それが質問につながったのでしょう。
「対称性の哲学」を語る中沢さんの言葉を引用し、次回につなげようと思います。
(中沢)
話を戻すと、どうしてレヴィ=ストロースがキリスト教とイスラム教をあまり高く評価しないかは、どうもそのことに関係している。キリスト教にせよ、イスラム教にせよ、その核心部にどうも忘我の部分が手付かずのままセットしてあるために、ときどきその部分が噴出して、倫理性の破壊ということを自分で実行してしまいかねない。
これに対して仏教は、大帝国が成立してくる時代に、すっかり分裂してしまったシャーマニズム的なものと野生の思考的なものを、もう一回結合して、二つを分離させないようにするための宗教としてできあがったんじゃないか。仏教の瞑想がその二つをつないでいます。仏教思想は徹底して「対称性の思考」としてできあがっていますから、野生の思考の称揚者も、これこそが人類のめざすべき宗教と考えたのではないでしょうか。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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