「科学的精神」は詩人からスタートした吉本隆明さんの「骨格」である

近代哲学者たちが言う野蛮、未開とは、ほんとうはそれ以前の大「段階」の終焉であり、同時に現「段階」の初期であると考えるべきで、現在の大「段階」の終焉の後には現在確定し難い次の「段階」に移行する。そう見なすべきではなかろうか。

1983年11月に出版された『チベットのモーツァルト』が、2003年4月に、講談社学術文庫に収録され発刊された版に、戦後最大の思想家と呼ばれる吉本隆明さんが「解説」を寄せています。 
これは「解説」です。論文ではなく…したがってタイトルもありません(「解説」とだけ付されています)。ただ、この10ページを読み込めば読み込むほど、これを書いた「吉本さんの思想の集大成」であることが、ひしひしと伝わってくるのですね。吉本さんは79歳です。
つまり、中沢新一さんの仕事を見続けてきた吉本さんが、中沢さんにインスパイアしたことで、この重厚な「論文」が生み出された、と筆者は受けとめています。

わたしたちが現在、野蛮・未開の小「段階」の認識法を継承しているアフリカ大陸や南北アメリカの原住民や、東アジアやオセアニアの島々の知識人(呪術師)の認知法のなかに、神秘性・非科学性、不可解な妄想やこじつけとしてしか見なしえない認知法、としかかんがえられない部分があるとすれば、未発達な社会の迷蒙な認識とかんがえるべきではなく、野蛮集団から現在までの大「段階」以前の大「段階」から引き継がれたものであるのに、その思考の意味するもの、その核心が何なのかなどが判断できず、謎に満ちていると見なされているのではないか。わたしなどの段階論からすると、そんな仮説ができるように思える。

「ダイバーシティ&インクルージョン」に関する著作は膨大に存在します。この合体ワードは、コーチングを考えるうえで「根本理念」であると受けとめています。ですから、「コーチング大百科」でも、書き続けています。
そして今、吉本さんのこの「仮説」を深く読み込むと、「ダイバーシティ&インクルージョン」の“究極的本質”に迫っている…と気づかされるのです。

晩年の吉本さんは、この「アフリカ的段階」をキーワードに思想を展開するようになるのですが、『新潮2024年5月』に掲載された吉本ばななさんとの対談のなかで、中沢さんは、晩年の吉本隆明さんの思想を次のように語っています。ばななさんも強く賛同します。

(中沢)
……彼がこの言葉に込めたのは、「アフリカは文明の未発達な、そこから脱すべき一段階ではなく、むしろ現在のアフリカの中に人間のモラルや宗教や生活の原型がそろっているのではないか」という問題意識でした。2008年のインタビューでも、「今の世界を考えるには、資本主義の「アフリカ的段階」を勘定にいれないといけない」と語っています。きっとそれが、吉本さんが最後に言い残しておきたかったことの一つですよね。
(吉本)
まさにそうだと思います。

吉本さんは1945年に東京工業大学に進学し、数学者の遠山啓教授の「量子論の数学的基礎」を聴講し決定的な衝撃を受けます(Wikipedia)。東工大で学んだ学科は「電気化学」でした。「科学的精神」は詩人からスタートした吉本さんの「骨格」を形成しているようです。
今回の最後に、『チベットのモーツァルト』を紹介する吉本隆明さんの「言葉」を引用することにします。ここは「論文」ではなく、文字通りの「解説」です。「科学と詩のコラボレーション」が顕れる「美学」に昇華しています。
ちなみに「タッキイネス」は「tackiness=粘着性」を意味すると類推されます。化学の専門用語ですね。

中沢新一の説くところでは、チベットの原始密教が構成体の要素として考えている場合、「管」とか「風」とか「滴」といった概念が使われる。たとえば「風」という要素は流動的な身体の動きを司るもの、「管」というのは血管の視覚的イメージから類推されたイメージ、「滴」はタッキイネスをまねた体液のすべてをイメージしたものにちがいない。これらのイメージから考えられた身体のイメージは、現在の医学の解剖図を心得ている専門医師や解剖図を知っている者からみれば平板な外観からこしらえたイメージだと知られてこよう。
けれど修練や瞑想を実地につきとめる修行を徹底的に行って、現在、わたしたちが行使しているよりも遥かに広く極限まで発揮させるような五感の修練を行なった行者からみれば、現在では到底理解できないほどこの平板の構成要素から成る機能体の概念が造られ、わたしたちからは、未開だが機能としては、身体の神秘的な力動としてしか解釈できない運動性や感覚性を実現しうるに違いない。……


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