河合隼雄さんも「ロマンチック・ラブ」を疑義の目で捉えている

大人の友情』の10番目のテーマは、「茶呑み友だち」です。前回の「中高年の嘆き」は、第2話の「オートミールの愛」にバトンタッチされました。前回の解説で触れましたが、このエッセイの冒頭で、「ロマンチック・ラブ」が取り上げられます。

日本のことを考える前に、アメリカの友人たちと話しあったことをもう少し続けてゆこう。いろいろな意見があったが、そのなかで注目すべきもののひとつに、アメリカにおける「ロマンチック・ラブの偏重性」というのがあった。「愛(ラブ)」というのが、一種のオールマイティのようにはたらいていて、二人が「愛しあう」と、その想いを遂げるのがいいことだ、あるいは、遂げるべきだ、と思う。しかし、そこで言う「愛」とは何であろう。相思相愛の関係で結ばれると幸福になる、とは言うものの、そのような夫婦はずっと幸福だろうか。周囲を見渡しても、熱烈な恋愛によって結婚したのに、数年もすると熱が冷めている夫婦が多いではないか。

河合さんの問題提起です。
「ロマンチック・ラブ」は、中世のヨーロッパで誕生し、価値観として定着します。男女が性的に合一したい、という強い願望を持ちつつも、それが禁じられることによる苦しみによって、心が鍛えられ、人格が磨かれる、というのがその根本です。
河合さんは、「そこには、隠された宗教性がある、と言ってもよかった。至高の幸福は、断念によってこそ支えられる、という知恵があった」、と「ロマンチック・ラブ」の原点を解説します。

ところが、だんだんと世の中が俗化してくるにつれ、ロマンチック・ラブの本来の在り方は忘れられ、愛しあっている二人が結ばれることこそが理想と思われるようになった。したがって、愛しあっている者が結婚することこそ望ましい、ということになった。ここで問題は、そのような激しい恋愛感情は長続きしない、ということである。

臨床心理学者は「リアル」を見つめることが習い性となっているのかもしれません。河合さんの「恋愛」観は一貫しています。ここでも語っているように「その感情は長続きしない」ということです。「ロマンチック・ラブの偏重」は、したがって「離婚の常態化」を必然的に招く、ということですね。

第2話のエッセイタイトルは「オートミールの愛」ですが、どうも河合さんの造語のようです。「俗化したロマンチック・ラブのみを夫婦関係の絆として考えるのはやめるべきだ」と、そのアメリカの友人は力説します。

「愛」にはいろいろ種類があるはずだ。燃えあがるような合一への欲求も愛だろうが、夫の朝食のために妻がオートミールをつくり、それを夫は満足して食べ、感謝する。それは決して激しくないし、まったく日常的で何の珍しさもないが、二人の間に流れている感情には実に深いものがある。これを仮に「オートミールの愛」と呼んではどうだろう。

河合さんが、日本を代表する「臨床心理学者」として、世界で認められる存在になったのは、米国、ヨーロッパの留学を基盤として、そこから世界中に友人が広がっていったことで、さまざまな文化に対する知識レベルではない、「実感」を伴う「俯瞰した視点」を獲得していったプロセスに見出せるのではないか…と、筆者は想像しています。

コーチングは、個性を有するさまざまな人たちとの交流、そして多くのセッションを通じて、多様な価値観に触れます。その過程を経ることで、優秀なプロコーチは誕生していくのだと思います。筆者は、河合さんの人生を「深く感じている」のですが、そこには、「優秀なプロコーチ」になるための数々ヒントが巡らされていることを体感しています。

「ロマンチック・ラブ」に疑念を抱くアメリカの友人は、日本人のある夫婦について、次のように語りました。

レストランで夫婦がコーヒーを飲んでいる姿を見ると、それほど話しあっているわけでもないのに、お互いの心づかいというのが感じられて、温かい感じが伝わってくる。傍にいて見ている自分までほのぼのとしてきた。アメリカの夫婦はもっと日本の夫婦の生き方を見習うべきではないか、と彼は主張する。

こんな話を聞いているうちに嬉しくなって、「オートミールの愛」が日本にあるかどうかはともかく、日本には「茶呑み友だち」という表現がある、と言うと、それは面白いから説明しろと言う。茶呑み友だちについて、私なりに勝手なことを言っているうちに、いろいろと考えることが出てきた。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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