(中沢)
仏教に関して言えば、鈴木大拙の『日本的霊性』(岩波文庫)、あの本は僕はもう一回、ちゃんと日本人みんなが読んでもらいたいぐらいすごい本だなと思います。そこでは禅と浄土真宗のことが取り上げられていますけど、べつに禅宗のことを言っているわけではないんですね。生活の中に浸透した禅のことです。日常生活の中で仏の教えが、花を活けたり、歩いたり、ものを食ったりするときに、浸透していく、これが禅だと。……
引用は、河合隼雄さんと中沢新一さんの対談を収めた『ブッダの夢』の第1章「仏教と癒し」の5番目の見出し「日本人の宗教性」の書き出しです。
同書は2001年3月に「朝日文庫」から出版されています。早々に購入し、読んでいます。本と出逢うのは、まさに「縁」ですが、この『ブッダの夢』を読んだ大きな収穫(の一つ)は、少し気重を感じながらも、中沢さんが絶賛している『日本的霊性』を手に取ったことです。『ブッダの夢』を取り上げコーチングの解説を始めた最初に、河合さんの次の言葉を引用しました。
…… 最初、華厳経に近づいたのは、やっぱり明恵ですね。それも不思議ですね。僕は自分のセラピーに夢を使っているから、それでどうしても夢に関心があって。明恵の『夢記』を分析したらというのは、かなり早くから湯川(秀樹)さんとか梅原(猛)さんに言われてたんだけど、仏教が嫌いだったから、ずっとほうってたんですよ。
河合さんを劇的に変えたのは、明恵の『夢記』と出逢い、読んだことです。「あまりにもすごいんで、もうむちゃくちゃ好きになったわけです」、と感激し、欧米礼賛の姿勢が、「仏教」の思想を自らのカウンセリングに積極的に組み入れる、その後の河合さんの方向性を決定づける大転換となるのです。
河合さんの「転向」とは、比べられるものではありませんが、筆者も『日本的霊性』を読んで感激しています。「日本の哲学」については、若い頃ですが(気負いもあって)、西田幾多郎の『善の研究』にチャレンジしています。ただし、あまりにも難解なので、途中で挫折してしまいました。「凄い内容」が書かれていることは、“ぼんやり”わかるのですが、以後、「日本の哲学者」の著作については、アレルギーもあって、遠ざかっていたのですね。
鈴木大拙の本も「なんとなく」敬遠していました。ところが……
「難解」ではないのです。であるのに「格調の高さ」は絶品です。その言葉一つひとつに「たましい」が宿っていることが感じられるのです。鈴木大拙は「日本的霊性は日本の大地に根ざしている」ことを、同書で繰り返し語ります。濃厚な「土の匂い」が私たちを包み込みます。中沢さんが言葉にするように、世界で共感される(鈴木大拙自身が英語で発表していますから)日本発の本格的哲学書です。
哲学者、宗教家に限らず日本、いや世界の識者がこの『日本的霊性』の素晴らしさを語り、さまざまの箇所を引用します。筆者も「ある箇所」を引用しようと思います。
“coaching”は漢字、あるいは大和言葉に翻訳されることなく“コーチング”として広がっています。筆者は、「果して鈴木大拙は“coaching”をどのように捉え、どのような言葉に翻訳しただろうか…」と、空想を楽しみながら、以下の箇所を読んでいます。
なお12月5日に、「“弁証法”という堅い翻訳語を“異質の調和”として再定義したい」のタイトルで公開した解説は、鈴木大拙の影響があったことをお伝えしておきます。
言葉の詮索をすると、脇途へそれる恐れのないこともない。日本では元来の大和言葉のうえに漢文字があり、そのうえに欧米から入って来た言葉に、多くの場合、漢文的訳字を付したので、今日の日本語なるものは複雑怪奇を極めていると言ってよい。大和言葉即ち日本文化が、独自の発達を遂げなかったうちに、大陸からの文化がその文字と思想をもってはいり込んだので、我らはいかにも跛行的な歩みを続けなければならぬようになった。そこへ明治の初頭から、欧米の文化が狂瀾怒濤のように押しかけて来たので、何でもかんでも手あたり次第に文字を組合せて、それらを自分らの頭の中へしまい込むに、維(こ)れ日も足らずという次第であった。(中略)
そうして一旦そんな熟語が出来あがると、そしていくらかのあいだ使用せられてしまうと、そこに既得権が出来て、容易に改められなくなる。多少の不便はあっても、また既製語が必ずしも妥当でなくても、その生存権はいつとなく固定していくのである。
次回は、『ブッダの夢』に戻り、引き続きコーチングを語ってまいります。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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