ザビーナの「転移」を受けとめたユングは「逆転移」してしまう……

ユングは女性たちから多くのことを学んだ。しかし見方によれば、ユングは女性たちから学ぶだけ学ぶと、彼女たちを足蹴にしたともいえる。ヘレーネのことも、ザビーナのことも、その存在と、ユングへの大きな影響力を人々が知るようになったのは、ユングの死後のことであった。一時ジュネーブにいてロシアへ戻ったザビーナも、決して幸せな生涯を送ったとはいえないようだ。

知の教科書 ユング』(講談社選書メチエ)からの引用です。同書の編者は山中康裕さんです。山中さんは「遊戯療法」を研究していた精神科医で、現在京都大学名誉教授であり、河合隼雄さんが日本に導入した「箱庭療法」の普及と発展に尽力され、「国際箱庭療法学会」の設立にも携わっています。

同書は山中さんを筆頭に、日本のユング研究者16人が執筆陣となって発刊されています。したがって200ページの同書は、日本を代表する16人のユング研究者の視点を通して、ユングの多面性が見事に顕れた研究書なのですね。執筆者のうち7名が女性研究者です。そのお一人である豊田園子さんは「ユングと女性…『魔女』たちのおしえ」という9ページの論考を寄せています。引用は、その最後あたりに登場する園田さんの視点です。

前回は、『ブッダの夢』第5章「善悪を超える倫理」の2番目の見出し「チベット仏教の悪魔、ユングの悪」について、語っています。「ユングの悪」という踏み込んだ表現が付されているように、中沢さんが「実生活のほうでも、結構、悪で通してますね」、と言葉にすると、河合さんは「すごいですよ。ユングは、女性がいっぱいいましたからね」、と応えます。そこからお二人の対話は、あまり話題にされることのない「赤裸々」とも感じる「人間ユング」の私生活が紹介されるのです。
そのまま『ブッダの夢』を語ってもいいのですが、一旦『知の教科書ユング』に転じてみるのもいいかな…と感じたこともあり、園田さんのコメントを引用しました。その前の記述はというと…

夫(ユングです)の愛人であるトニーを受け入れたように見えるエンマ(ユングの妻です)の内なる苦悩をどこまで理解したのだろうか。エンマが亡くなったとき、ユングはなかなか立ち直れないほどの大打撃を受ける。その後ユングは、従妹のヘレーナが仕立てた夜会服で着飾った妻の幻影を見た。そのときユングは思ったという。「これは妻ではない、彼女が私のために作ったか、あるいは「注文して作らせた肖像なのだ」と。 「()は筆者が付記しています」

ではザビーナとは、どのような人物なのかというと…

ザビ―ナ・シュピールラインという若いユダヤ系ロシア人の女性がユングの前に現れたのは、重い神経症を患う患者としてであった。(中略)
最初は「興味ある症例」であった彼女は、ユングの治療のおかげで劇的に治癒する。そこには患者の治療者に対する恋愛性の転移が大きな働きをしたことは疑いがないであろう。そして治療者の方にも逆転移があった。その後、チューリヒ大学医学部で学位をとるザビーナに、ユングは自分の仕事を手伝わせた。しかし治療者と患者の枠を超えた親密さは、ザビーナの両親の知るところとなり、既婚者のユングは倫理的な責任を問われるという状況となった。

園田さんが、論考の最後あたりで「足蹴にした」と、厳しい言葉をあえて用いる背景です。「倫理的な責任」という表現も登場します。ただし、園田さんは研究者ですから「文春砲」的なスタンスではなく、バランスをとります。次のコメントを引用し、今回の解説を終えることにしましょう。

ユングの裏切りによってザビーナは苦しんだが、それでも決してユングを憎むことはなかった。彼女はフロイトのもとで精神分析家となり、その後結婚し、子どもを得るが、ユングへの友愛の気持ちを持ちつづけていたようである。その点では、彼女の方がユングの上手を行っていたと言えるかもしれない。ユングは、自分が卑劣な手段で切り捨てたとはいえ、自分が愛した女性がフロイトの足下に行き、手の届かないところに行ってしまったことについて、やはり苦しんだのではなかったろうか。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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