『＜心理療法コレクションⅢ＞生と死の接点』の126ページからの見出しは「全体性」です。CBLコーチング情報局では、この「全体性」というキーワードについて、語っていますが、「自我=意識」を軸に展開する河合隼雄さんのアプローチを紹介してみましょう。
人間の自我=意識の在り方は、実に多くの種類があるはずである。しかしながら、近代ヨーロッパにおいて確立された自我の優位性は、自然科学の驚異的な発達によって全世界に立証された形になり、それを極端にまで発展させたと思われるアメリカ合衆国は、「世界の中心」であるかの如き観を呈したこともあった。しかし、1970年代になると、そのような中心性に対する疑いは強烈になり、現在では、欧米中心の思想は相当弱くなってきたとみるべきであろう。（126ページ）
ベトナム戦争以前の米国は、最先端のテクノロジーは言うまでもなく「思想」までも、世界の中心として「パックスアメリカーナ」を地球全体が共有していた、というコメントです。ただし、その「思想」性については、河合さんがお亡くなりになって15年が過ぎた現在、さらに劣化が進んでいるようにも感じます。
人間の意識にはいろいろなタイプがあり、ヨーロッパ型に対して、おそらく、もっと他の、たとえば、老の意識、女の意識、少年の意識など名づけられるものがあると思われる。可能性という点で言えば、すべての人間は、老若男女、いずれの意識の選択も可能なのであろう。女性でももちろん、男性の意識の確立は可能であり、欧米ではある程度そのとおりのことをしているといっていいだろう。その場合は、「女の意識」は開発されずに残ることになる。あちらとればこちらとれずのジレンマは常に存在する。（127ページ）
「ダイバーシティ」という概念は、欧米発です。それ以前から存在する「レディ・ファースト」は外形的なものであり、欧米の意識は「男性原理中心の男性社会」であって、その補償の必要性から、強く言葉として広がっている、と河合さんは解釈しています。
文化や社会の変動が少なく安定しているときは、その集団に属する人々は、共通の意識タイプをえらび、それが唯一絶対であり他のものの存在すら疑わないほどの状態にある。従ってそのような安定を願う人間の心は、その意識体系の保存に役立つ道徳や習慣をつくりあげて、それを守っていくのである。しかし、集団内に生まれてくる天才の力や、集団外の影響力などによって、その意識体系は時に改変を迫られることになる。（128ページ）
集団内で形成されている価値観は強固です。そこに居場所を求める個々のメンバーは、その価値観に適応することで安寧を得ることができますから、疑問を感じることなく受容します。その強い価値観も改変されてしまう… その事象を「天才」というワードも使って説明する河合さんに、思わず引き込まれます。
CBLコーチング情報局はこれまでも「コーチングとはダイバーシティ&インクルージョンを体現する」と、語ってきました。この節の最後で河合さんは、次のようなメッセージを送っています。
可能性の拡大や追求は、どうしても西洋的な自我と結びついて、進歩発展や拡張の方にばかりすすむようであるが、真に可能性を望むのならば、老の意識、女の意識、少年の意識などこそ、もっと追求すべきであろう。老人がわかがえり、女性が男性化することのみが可能性の追求ではない。そして、今まで示してきたように、われわれ日本人は、老の意識や女の意識について、西洋人よりよく知っているように思われる。このことの意味を明らかにして、その明確な評価をなした上で、西洋的な自我との対決と相互作用をはかることこそ、現代の日本人に課せられた責務のように思われる。（136ページ）
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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