ユング派心理学者の河合さんが、他学派のなかで多くの言葉で解説するのはロジャーズです。ユングは、初期フロイトに傾倒しながら、医者としてのスタンスを崩さないフロイトに対して疑問を持つようになります。つまりフロイトの精神分析は「医者が患者を治す」という視点です。その後「無意識」の捉え方で決定的な断絶が生じ、フロイトから破門されるようなかたちで、袂を分かつことになります。
ただこの状況はユングにとって過酷過ぎました。自己の統合が出来なくなってしまうのです。結果、後の識者たちが指摘する「統合失調症」を患うのです。長期の期間でした。ただ、ユングはそのことを経験した(くぐり抜けた)ことで、巨人ユングが誕生したのです。
ロジャーズは、ユングよりもっと後に登場する臨床心理学者でした。ロジャーズは、当時フロイトの精神分析が心理療法の世界を席巻している状況に疑問を持ち始め、さまざまな実践による体験(自己認識)を、科学的アプローチを前面に出して、精神分析の誤りを糾していくのです。そして確立したのが「来談者中心療法」です。「カウンセラーが治すのではなく、クライアントが自らの力によって回復する」ということを証明したのです。
ただし、後年になるとロジャーズは哲学的な相貌を有していったことを補足しておきます。
ユングとロジャーズには接点といえるものはないのですが、大きな概念としてつながっていたことが見て取れます。実践家としての河合さんがロジャーズを語るのは、そのこともあるのですね。
前回までの解説で、「ロジャーズの3原則」のうち、「共感的理解」と「自己一致」について、取り上げていますので、今回は、「無条件の肯定的配慮」について、『<心理療法コレクションⅡ>カウンセリングの実際』にある河合隼雄さんの解釈を紹介してみましょう。
河合さんは「無条件的積極的関心」と訳して語りを進めます。河合さんは心理療法家(カウンセラー)として直面する、最も過酷な(かつ多頻度に発生する)事例をとりあげ深めていきます。
たとえば、クライアントが自殺をしたいと言ったそのときに、その人が自殺したいと言っていることを、無条件に積極的に関心を払えたら、これはすばらしいと思います。ところが、われわれにはなかなかできない。ともかく、死んでもらったら困るという気持ちがすぐでてくる。これはもう無条件にならない。死ななかったらいいのにと思うことは、もう条件づきになってくる。そこで、初心者の人は、それをやめて、何とか積極的関心をもとうとするのですが、もてない。この繰り返しばかりする。(116ページ)
いかがでしょうか。心理療法家(カウンセラー)に憧れて、一生けんめい勉強し、資格をとった。そして実践を迎えます。現実は河合さんが言うように、希死念慮、自殺念慮の人に対して正対して臨むのがカウンセラーの世界なのです。コーチングのクライアントを想定したとき、その違いを改めて実感されるのではないでしようか。
「この繰り返し」を経験する河合さんは、次のように「無条件の肯定的配慮(積極的関心)」との「自己一致」に挑んでいくのです。
このくり返しばかりをする。私はそれよりも大切なことはやはり自分がカウンセラーとして、無条件的な積極的関心をねらいとしているけれど、目標にほど遠い人間だということを、まず認めることが大切だと思います。そう言う自分に対しても、やはり自分が自分に対して積極的関心をもってやらねばなりません。そういう点からいいますと、相手の言うことを無条件に聴けないということが生じたとき、私はむしろそういうことも尊重すべきだと思います。(116ページ)
今回のキーワード解説は、ここでとどめておきましょう。次回は「無条件に聴けないことを尊重する河合さんの哲学」が伝わってくる内容です。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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