
(中沢)
そういうふうに考えると、職人の技とユングなどの夢理論というのは、非常に関係があると思うんです。一方、フロイトの精神分析学というのは、カソリックの神父さんが告解所のなかでやっている行為とよく似たことをやるわけですよね。言葉によって分析する。ですから、教会と教会の外の職人の世界というか、ヨーロッパの世界をつくっていた二つの極が、ああいうかたちで出ているような感じがするんです。
『ブッダの夢』、第6章「汎神論風夢理論のこね方」の7番目の見出し「パイをこねるような夢の作業」の中の対話を取り上げてコーチングに敷衍しています。河合さんは、ユングとマレイ半島のセノイ族の「夢分析」は同じ発想に立っていると指摘しています(前回の解説の最後)。引用は、中沢さんの続く語りです。
中沢さんの「二つの極」…教会と職人の世界…に河合さんは響きます。ユングの後半生にとって最重要タームともいえる「ボーリンゲンの塔」を河合さんは語ります。
(河合)
ユングは職人が大好きなんですね。ユングは自分で自分の塔をつくったときに、煉瓦工の職人のギルドに入るんです。スイスでは、個人でも勝手に煉瓦積みなどをしてはいけないんですね。煉瓦積みをしたいものは煉瓦積み工のギルドに入らなければならない。それで、試験とかいろいろあるんでしょうけど、ユングは入れてもらって、そして自分で煉瓦であの塔をつくったわけです。
グーグル検索で「ボーリンゲンの塔」と入力すると、画像と共にたくさんの解説がヒットします。ここで、『知の教科書 ユング』(講談社選書メチエ)から、「2 ユングの後半生~『夜の彷徨』のおわり」の一節(42ページ)を引用してみましょう。中山康裕さんの執筆です。
1913年にフロイトと別れたユングは、しばらく分裂病(筆者註 : 2000年出版なので旧の病名)に非常に近い状態を彷徨する。彼は、ほんのわずかな患者たちとは交流をもち、かろうじて家族との生活だけは最低限保ったが、他はほとんどすべての公職をやめてしまい、チューリヒから30キロほど離れた、チューリヒ湖の上湖のほとりにあるボーリンゲンで、彼自身が石を積んで建てた塔に閉じこもり、もっぱら瞑想に耽った。そして、ときどきチューリヒ湖岸の砂の上に、のちに、ドイツの中国学者リヒャルト・ヴィルヘルムの『太乙金華宗旨(たいいつきんかしゅうし)』のコメントを依頼された際に、初めて東洋の仏教世界、ことに密教の世界では「曼荼羅」と呼ばれていることを知ることになった。あの特有な円と四角、四に九よりなる図形を描いたり、石を積んだり、これを庭に植えたり、壁にはめ込んだりして、過ごしたのである。そうした生活の七年間、彼は、本だけはよく読み、ようやく1921年になって、『タイプ(心理学的類型)論』一冊を書き上げて、この世に復活してくる。こうして、ユングはもっとも人口に膾炙し、早期から理解された仕事に出会ったのである。
フロイトとの決別が、いかにユングにダメージを与えたか…伝わってきますね。「タイプ論」を書き上げることで、フロイトとアドラー、そして自分の「タイプ(性格)」を相対化させることに成功します。ユングにとってのエポック・メイキングでした。ここから「真の巨人」となるべくユングは走り続けます。
タイプ論は、一昨年の8月22日に「ユングの『タイプ論』によって相補性を理解する!」というタイトルで解説しています。冒頭を再掲させていただきます。
ユングの代表的業績の一つに「タイプ論」があります。敬愛していたフロイトから、まずアドラーが分かれ、その後で自分もフロイトから袂を分かち、なぜそれぞれ異なる学説を提起することになったのか… ユングは考えました。そしてユングは、そうなってしまうのは「人間の類型、タイプの違い」の差によるものだという結論に達します。今回のキーワード解説は「ユングのタイプ論」を紹介します。
これまで、この「コーチング大百科」で書いてきたことが、いろいろ繋がっていることに気づかされます。今回の最後に、一昨年の7月23日に「ユングは『曼荼羅』を発見し『相補性』として理論を調和させていく!」というタイトルで公開した解説にリンクを張っておきますので。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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