「哲学研究者」は大学で学ぶ人だけでなく臨床の人たちもいる…

(鷲田)
硬いことばで問い詰めるというのは、同業者では得意な人が多くて、理屈好きな人が多いですけど、他方で哲学研究者として……

臨床とことば』の第2章「聴くことの重さ」の5番目の見出しである「ことばをほぐす」の内容について、前回、河合隼雄さんと鷲田清一さんの対話の「意味」をほぐしながら、コーチング解説を試みています。今回もその続きをやってみます。
少し前に、「一つの見出しの内容を一つの話にまとめる」という方針が崩れてきたことを、半ば弁解しつつ、お伝えしていますが、考えてみると、その方針そのものに「意味」は見出せないので、放棄することにします。少し哲学思考が身についてきました(苦笑)

冒頭の引用は、見出しの「ことばをほぐす」の意味を、鷲田さんが説明されるところです。
ところで、引用の「哲学研究者として……」は誰なのか?
引用を続けます。

他方で哲学研究者として看護師さんや小学校の先生と、あるいは会社で働いている人なんかと話していますでしょう。そのときに、今まで短い期間ですけど、哲学者の名前を出さないやり方で聴くことからはじめたときに、今かろうじて、これは一つできることかなということが、「ことばをほぐす」ということなんです。

鷲田さんは「臨床哲学」を提唱しています。私たちは、大学教授をはじめとする高等的(高踏的?)な研究者のことを「象牙の塔にこもって…」と、少しひねくれた解釈をしてしまいがちです。臨床とは「実践」であり、在野の研究者と共に研究を重ね、「実証」していくことに意義を見出そうとするのが「臨床哲学」であると、筆者は腹落ちさせています。
ちなみに鷲田さんは、大阪大学総長、京都市立芸術大学理事長・学長を歴任されています。

鷲田さんは、在野研究者と「ことばをすり合わせる」ことに、とても苦労したことを開示されました。

私たち阪大の社会人入試で看護師さんを二人受け入れましたときに、ことばをすり合わせるのに本当に苦労しました。看護師さんの使われていることばと、私たちが使うことばが、お互いに、それどういう意味で言っているのと。ニュアンスもわからないし、それに態度が正反対なんですね。看護師さんはチームワークでやらないといけない。それから、その都度結論を出さなきゃいけない。私たちは、そんな早く結論を出すわけにはいかない。わからないことのほうが大事なくらいでね。何というか、むしろわからないことが続いたら、今日の議論は面白かったなあと、答えが出ないときのほうが気持ちがいいということがありまして。正反対で、本当にことばのキャッチボールができるまでに一年ぐらいかかったんですよ。

「むしろ、わからないことが続いたら、今日の議論は面白かったなあ…」という、鷲田さんの自然体の語りによって、哲学者の心性に関して「なるほど…」と、合点することができました。
看護師という職業は、現場(文字通り臨床です)が全て、と言ってもよいかと思います。しかもその現場は、一瞬一刻が勝負となるシビアな世界であることを、鷲田さんは体感されました。哲学者を職業と言っていいかは「?」ですが、異なる分野(正反対)の専門職同士が、真剣な対話を試みた場合に、「齟齬」は必然的に生じることを鷲田さんは、実証してくれています。

「CBLコーチング情報局」は「異質の調和」は実現可能だと捉えます。鷲田さんは、1年の経験について、つぎのように総括されます。河合さんは、このあたりの鷲田さんの語りについては、徹底的に「聴き役」でした。
6番目の見出しは、「便宜的因果性に賭ける」という少々難解なタイトルが付されています。河合さんの「それはすごく必要だと思います。……」という、鷲田さんの長い語りに共感するところからはじまります。
今回は、5番目の見出し「ことばをほぐす」の長い語りの最後までを(上記引用の続き)紹介して、コーチング解説を終えることにします。

でも、そのときふっと思ったのは、お互いがそれぞれことばが変わってきたといいますか、お互いがそういう中で、自分たちが使ってきたことばがほぐれてきまして、それぞれのことばが変わってきたなと。
最初からあまり、概念というか、理論で武装しないでものが考えられるという経験というのは、哲学研究者として多分意味があったことだろうし、私たちは私たちで、一つずつ個別的なことに関わることでしか見えないことを実感としてわかってきた。ことばがお互い変わった印象がある。もちろん私たちは直接患者さんとか苦しんでいる方に関わるというより、それをケアしている人に関わることばを使っているんですけれども。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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