正直言ってゾクッとするものがやっぱりないですね
(河合)僕は全面コウフクしたんですよ。「降伏(=幸福)しました」って(笑)。もう書かなかったんです。(鷲田)あれ、私も原稿を書いたのでパラパラ見てたんですけれども。不思議なのは、正直言ってゾクッとするのがやっぱりないです...
(河合)僕は全面コウフクしたんですよ。「降伏(=幸福)しました」って(笑)。もう書かなかったんです。(鷲田)あれ、私も原稿を書いたのでパラパラ見てたんですけれども。不思議なのは、正直言ってゾクッとするのがやっぱりないです...
(鷲田)私が中学生ぐらいのときに、日本に本格的にロックが入ってきたんです。ビートルズが中学1年生のときに入ってきまして、あのとき、今でもそうですけれども、初期の曲を全部英語で歌えるんですね。でも今だから改めて意味を考える...
(鷲田)河合先生は、谷川俊太郎さんとのご対談の中で「感心する才能」ということをおっしゃっておられますね。つまり、たとえば治療の一環として絵を描いてもらったときとか、あるいはお話を聞かれたときに、「これは何を意味するのか」...
(鷲田)河合君のことばと、ミシェル・セールのことばは、今まで私は魂を避けていたんですが、こういうことばだったら、魂ということばをリアルに語れるかもしれない。それ以来少し気が楽になりました。(河合)それはすごく面白い。魂を...
(鷲田)私、先生と向かっていろいろじっくりお話しさせていただくのは今日がはじめてなんですけど、実は、先生の長男でやはり臨床心理学者の俊雄さんとは面識があります。あるとき彼がふともらしたことばに目からウロコが落ちました。と...
(鷲田)……文学ってゆるそうに見えるけど、実は緻密に個々の作家の中で隙間なくきちっと編まれるというか、構成されていると思うんです。でも事例研究というのは、意味が完全に一つの織物の中に凝縮されない。ある別の解釈をも許すよう...
(河合)それはすごく必要だと思います。われわれもそうだけど、実際に苦しんでいる人に身近に接するわけだから、どうしてもその世界に入りすぎて、もういっぺん横から見る機会がないわけじゃないですか。そういうときに、鷲田さんと話し...
(鷲田)硬いことばで問い詰めるというのは、同業者では得意な人が多くて、理屈好きな人が多いですけど、他方で哲学研究者として…… 『臨床とことば』の第2章「聴くことの重さ」の5番目の見出しである「ことばをほぐす」の内容につい...
(鷲田)先生、カウンセリングのときに、クライアントが語ろうとされている物語というもの、出かけている物語に対して、まず最初にどういうふうに関わるんですか。(河合)とにかく待ってるというか、やっぱり修練というよりしょうがない...
(鷲田)ところが、皆がいい塩梅で共同生活をできるには、一人犠牲者をつくったらいいというか、あるいは、一人ブァルネラブル(傷つきやすい、攻撃されやすい)な存在をつくるというか。家族でも何でもだれか一人いじめられ役というか、...
臨床心理学者の河合隼雄さんと哲学者(新たに臨床哲学を創始)の鷲田清一さんの対話集である『臨床とことば』を引用しながらの「コーチング解説」を重ねています。前回は、第2章の「聴くことの重さ」の「カギは“調和”の感覚」を読み込...
(河合)……日本人には、調和の感覚は美的感覚としてありますわね。日本人は倫理観という場合、美的感覚がすごく大事になってくるじゃないですか。向こうは一神教でしょう。だからやはりインテグレーションと言いたいし、どこかに一なる...
(鷲田)今の私たちから考えられないですけど、王朝文学なんて読んでいていつも面白いなと思いますのは、視覚性がどこか引っ込んでいる。最初、何となく噂話で聞く、で、その後香りがしたりとか、その後衣擦れの音がしたりとか。で、真っ...
(鷲田)修練と言っても、すごく大変だろうと想像するんですが、以前「傾聴」のトレーニングをしている方のお話をうかがったとき、やはり相手からことばが漏れてこないで、沈黙に耐えきれないで、ついその沈黙を破ることばを入れますけど...
(鷲田)先生の前で言うのもなんですけど、臨床というのはこんなに時間がかかるものかと……。(河合)時間とエネルギーと、こんなにかかるものはないでしょうね。(鷲田)前に『「聴く」ことの力(ちくま学芸文庫)』に書きましたけど、...