宮沢賢治の「童話」は「children’s tale」ではなく「fairy-tale」…?
(河合)僕はもうひとつね、きょう、中沢さんと話したいと思ったのは、僕は宗教と科学の問題について関心があって、科学は、言ってみればわれわれ通常の意識を非常に分割して、切断して、分けていっているんです。普通だったら単に水と言...
(河合)僕はもうひとつね、きょう、中沢さんと話したいと思ったのは、僕は宗教と科学の問題について関心があって、科学は、言ってみればわれわれ通常の意識を非常に分割して、切断して、分けていっているんです。普通だったら単に水と言...
(中沢)観音様が観音様になる前は常泣菩薩って言われてました。いつも泣いてる菩薩さんです。いつも泣いている菩薩がいて、なぜ泣いているのかというと、世界を見ると、生き物を見ても悲しくて悲しくてしようがない。どんなちいちゃい生...
(河合)西田幾多郎は哲学だし、山田耕作は歌で、あれも相当早くからみんなに好かれるわけでしょう。ところが、宮沢賢治の入り込んだ意識の層が、もうひとつ深い、死のすれすれというところまで。死のすれすれまで行っているから、こんな...
(中沢)……賢治の『農民芸術概論』は、大地を科学力によって合理的に変えていくけれども、それは大地を収奪・破壊したりすることじゃないんだ。農業というのは、母性の大地を相手にしながら、それにお父さんの科学の力を注ぎ込むことに...
(中沢)先ほど河合先生がおっしゃった、母性の空間の中に父性が科学という形でしっかり侵入しているのが賢治なんだというご指摘は『農民芸術概論』なんかを見るとよく出ているなと思います。『農民芸術概論』の中で、科学で、たとえば天...
(河合)カムパネルラは、僕は、男でもあるし女でもあると思ってたんです。ふつうわれわれが言うお母さんとかお父さんとか、恋人とかから、全部離れています。だからすごい世界を書けたと思いますね。(中沢)あの空間全体は、やっぱり観...
(河合)…… 僕は、『銀河鉄道の夜』を読んで面白いのは、はじめ、母と息子の物語として出発するんですね。だから、ある意味では、ずっと母性が底流にあるんです。あるんだけれども、チェロのような声をした男の声が聞こえてくるって。...
(河合)やっぱり自然科学というのは、単純な分類をすると、父性でしょう。父親的な切る力がなかったらできないですからね。母親からも自立できるし、自分は物事をすっきりわかっているんだという、賢治という人は、日本人には珍しく、父...
(中沢)恐るべき生命力。あれを論理の中に必死に抑え込んでいって、しかも、一貫してますね。いつも矛盾したものを同一物として見ていく。それを外側から包摂していく自覚の視点を持っていた。それが西田の場合は、善だとか仏教だとか言...
(中沢)『土神ときつね(狐の漢字を充てている版もあります)』を見ても、この土神の嫉妬の激しさは、これはやっぱり自分の中にそういうものを抱えている人でないと、ここまでの表現はできない。自分の頭の上で跳びはねている狐に対して...
……ですから。これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、ただそれっきりのところもあるでしょうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、そんなと...
(中沢)アングロサクソンって、犯罪にかけては天才的でしょう。(中略)それでいざ見つかった時には、「私はたしかに人殺しが好きなんです」って。切り裂きジャックとか、ああいうセンスがあるんです。賢治の「署長さん」は、今のイギリ...
(河合)僕の大好きなのは、『毒もみのすきな署長さん』。(中沢)ああ。あれは危ない話です。とくに今は(笑)。(河合)僕は兄弟が多いのですが、皆この作品を好きになって、家じゅうで、何かあると、いや「毒もみはやめられん」とか言...
(中沢)実際に動物を殺して食べなきゃならないということを賢治はそんなに否定していないんですよね。猟師の人生に共感を持って……。(河合)『なめとこ山の熊』とか。(中略)(河合)それも頭から、なぜ熊を殺すのかっていう態度でヴ...
…… は44行存在します、続く最後の9行を以下引用します。…… 率直に述べようと思う。総ての生物はみな無量の劫の昔から流転に流転を重ねて来た。流転の段階は大きく分けて九つある。われらはまのあたり二つを見る。一つのたましい...