河合隼雄さんのすべてを受けとめた小川洋子さんは「新たな物語」を生み出した!
対談の途中、先生は一度、深い悲しみの表情を見せられました。御巣鷹山に墜落した日航機に、九つの男の子を一人乗せたお母さんの話が出た時でした。心弾む一人旅になるはずが、あんな悲劇に巻き込まれ、お母さんは一生拭えない罪悪感を背...
対談の途中、先生は一度、深い悲しみの表情を見せられました。御巣鷹山に墜落した日航機に、九つの男の子を一人乗せたお母さんの話が出た時でした。心弾む一人旅になるはずが、あんな悲劇に巻き込まれ、お母さんは一生拭えない罪悪感を背...
(小川)子どもの頃からそういう環境にいたので、金光教の教えというのが、自分の中に否応ないものとしてあります。金光教は、神様と人間の関係を作っていく宗教なんです。そしてその関係はまだ確立されていない。なぜなら、神様のことを...
(小川)究極の家出ですね。(河合)そういうことです。まさに「出家」は「家出」ですから。それでそういう時に「絆」という同じ漢字が使われているのは面白いでしょう。「絆し」を断ち切って出家するから意味があるんですけど、初めから...
『生きるとは、自分の物語をつくること』の11番目の見出しは「多神教の日本で生まれた『源氏物語』」です。河合さんは、一神教であるキリスト教と多神教の違いを紐解きます。日本は多神教であったからこそ、紫式部が『源氏物語』を著す...
(小川)人間が困難な現実を、自分の心に合うように組み立て直して受け入れるというのは、私にもよくわかるんですけれど、ときどき、例えば地下鉄サリン事件に遭って助かった方だとか、尼崎の脱線事故で助かった方、あるいはアウシュビッ...
(小川)セラピストが、解釈をしない?(河合)ある時ある箱庭のスライドを見せられたんですが、いくら観てもモノの言いようがなかったんです。そうしたらそれは、その人の友達が面白半分に作ったものやっていうんです。 『生きるとは、...
(小川)言葉がない。(河合)ないんです。というのは、大人はごまかしてしゃべれる。ちょっと間が悪いなと思ったら、「いや、曇ってますな」って言えばいい。話を続けられるんです。ところが中学生や高校生の子はそんなことは絶対言いた...
『生きることは、自分の物語をつくること』の7番目の見出しは、「偶然」に気づくこと、です。最初の1ページでは、河合さんが、カウンセリングの臨床で、患者さんが治っていく過程で、さまざまな「偶然が起こる」ことを語ります。それは...
今回から、『生きるとは、自分の物語をつくること』の第Ⅱ部に移ります。第Ⅰ部の「魂のあるところ」は、2005年12月15日に文化庁長官室で行われています。そして、この第Ⅱ部は、半年後の2006年6月15日に、同じく文化庁長...
(小川)先生は昔話ばなしやおとぎ話を研究されておられますよね。(河合)そうです。それらのお話はみんな、ホラだけどある意味本当なんですね。(小川)真理ですね。昔々あるところにあったという。(河合)白雪姫も、山姥も、ヤマタノ...
(河合)博士もルート君もいいけど、家政婦さんがまた面白かったですね。あの家政婦さんも、下手したら博士との恋愛関係になるでしょう。それがそうならない。(小川)はい。そこが彼女の利発なところです。それに、家政婦という仕事が大...
(河合)完全数というのも不思議ですね。約数の和がその数となるという。何でや、と思うね。(小川)あの不思議を知って感動しない人はいないと思います。神様の手帳に書いてあるという感じ。(河合)人間の生まれる前からこというオーダ...
(河合)博士の80分間の記憶というのは、何がキッカケで思いつかれたんですか?(小川)それはですね、江夏豊と関係があるんです。江夏の背番号28が完全数だということに気がついて、あ、野球を数学と組み合わせてみようと思ったんで...
(河合)『博士の愛した数式』(新潮文庫)を読ませていただきました。感激しましたよ、本当に。僕、もともと数学をやっていましたからね。(小川)数学科のご出身なんですね。(河合)ええ、だから余計に思いが深かったですね。それにね...
前回に予告した通り、今回から、小川洋子さんによる河合隼雄さんへの最後のインタビュー、『生きるとは、自分の物語をつくること(新潮文庫)』を取り上げ、コーチングに敷衍していこうと思います。 この本は、文庫本で151ページの...