近年、「ポリティカル・コレクトネス」という表現の認知が広がってきました。直訳は「政治的正しさ」です。この言葉が用いられる場合、そこにさまざまな含意の存在が指摘されています。
河合隼雄さんのベストセラー・エッセイである『こころの処方箋』は、1992年の発刊です。河合さんは、このカタカナ表現は使っていませんが、その含意について洞察していたことが伝わってきます。今回は「100%正しい忠告はまず役立たない」がタイトルのエッセイを紹介します。
ともかく正しいこと、しかも、100%正しいことを言うのが好きな人がいる。非行少年に向かって、「非行をやめなさい」とか、「シンナーを吸ってはいけません」とか、忠告する。煙草を吸っている人には、「煙草は健康を害します」と言う。誰がいつどこで聞いても正しいことを言うので、言われた方としては、「はい」と聞くが、無茶苦茶でも言うより仕方がない。後者の場合だとすぐに、「そんな無茶を言ってはいけません」とやられるに決まっているから、まあ、黙って聞いている方が得策ということになる。
1992年当時ということで「シンナー」が登場しましたが、「あるある」が伝わってきます。この著作は55のエッセイで構成されています。一つひとつのエッセイは全て4ページにまとめられており、その文字量の中で、河合さんのウイットあふれる「起承転結」が描かれます。読者はこのキャッチ―なタイトルに引きつけられるでしょう。次いで河合さんは、「もちろん、正しいことを言ってはいけないなどということはない」と、ニュアンスの微修正を行い、「忠告」が生きてくる場合を語ります。
ひょっとして失敗するかもしれぬ。しかし、この際はこれだという決意をもってするから、忠告も生きてくる。己を賭けることもなく責任を取る気もなく、忠告によって人間が良くなるのであったら、その100%正しい忠告を、まず自分自身に適用してみるとよい。「もっと働きなさい」とか、「酒をやめよう」などと自分に言ってみても、それほど効果があるものではないことは、すぐわかるだろう。
リラックスしているとき(言い方を変えると「わきが甘くなったとき」)、人は「棚に上げている」ことが往々に生じます。「私は100%棚上げしたことはない」と言い切る人がいたとしたら、それこそ「嘘」でしょう。その「嘘」を河合さん「ホトケ」のメタファーで面白く解説してくれます。
もっとも、自分はその通りやっているし、効果もあげている、という立派な方も居られるが、そこまで立派な方は人間を通りこして、既にホトケになって居られるのだろう。ホトケに「こころの処方箋」など不要なのはもちろんである。実際、いつどこでも誰にでも通じる正しいことのみを生きていては、「個人」が生きていると言えるのかどうか疑わしい。それは既にホトケになっている。
河合さんは前半で、「決意を持っての忠告が生きてくる場合もある」と語りますが、これについても、“上手に”ことばを重ねます。
一回目の時には、相当に自分を賭けて言っているのに、二回目になると、前のようにうまくやってやろうと思って、慢心が生じたり、小手先のことになって、己を賭ける度合が軽くなっているために、うまくゆかないのである。
そして最後は、次の二行を「結語」として「起承転結」が完成しました。
ここに述べられたことは、100%正しいことである、などと読者はまさか思われないだろうが、念のために申しそえておく。
今回は、「河合さんのエッセイ解体新書」のような流れになってしまいましたが、私たちコーチが「言葉」を用いる際に、深く噛みしめておきたい「こころの処方箋」として、しっかり受けとめたいと感じています。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.