『大人の友情』の9番目のテーマは、「友情と同性愛」です。このテーマもこれまでと同様に、4つのエッセイによって語られているのですが、少々キャッチ―なテーマですね。読者のみなさんも、4つの話がどのように展開されるのだろうか… と興味が喚起されているのではないでしょうか。
ということで、4話のエッセイタイトル（のみ）を、とりあえず紹介しておくことにします。
1話 心のときめき
2話 「同性・愛」と「同・性愛」
3話 惹きあう力
4話 社会的通念の変化
1話目は、次の言葉から始まります。
恋愛の経験のある人は、誰でも「心のときめき」というのを実感したことがあるだろう。これはほんとうに心臓がどきどきするのだ。自分だけが心に秘めていて、相手もそれに気づいていないとき、その人が近づいてきたりすると、心臓がどきどきして、自分は外見の平静を保っているときでも、心臓の鼓動が聞こえてバレてしまうのではないか、とさえ感じることがある。
「恋愛感情」にスイッチが入った時の「リアル感」を河合さんは、とても「共感できる」表現で綴ってくれました。「心臓の鼓動が聞こえてバレてしまうのでは…」は、河合さんの心身に生じた「リアル」であることが伝わってきますね（笑）
ところで、エッセイのテーマは「恋愛」そのものを語るわけではなく、あくまでも「友情」です。中間あたりから、「心のときめき」と「友情」、そして「同性愛」を探求する河合さんの臨床心理学者としての視点が鮮明になってきます。
友情の場合、そのような心のときめきを感じないから友情が薄いなどとは言えない。それは、深く静かに永続することがある。このことから考えて、心のときめきを感じるような友情は、同性の間の場合、それは同性愛につながるのではないか、と考える人がある。
河合さんは、夏目漱石の『こころ』を学生時代に読んだとき、「同性愛」のイメージは全く想起されていなかったにもかかわらず、1959年にアメリカに留学した際に、アメリカ人から、そのような感想が出てきて、「いやなことを考えるのだな」と思ったことを語ります。河合さんが31歳のときです。
私がアメリカで『こころ』の先生とKの関係を「同性愛」と言われたとき、そのアメリカ人が、それを何だか「『秘すべきもの』なのだが、日本人は平気なんだろう」という感じで言ったので、余計に反撥を覚えたとも言える。当時の私にとっては、同性愛は「異常」とまでは言えないにしても、異性愛の方がほんとうで、同性愛は「治す方がよい」と思っていたために、先生とKのことを、そのように断定されると、夏目漱石の作品を侮辱されたような気さえしたのである。
バイアスは、さまざま存在することが指摘されています。それらのバイアスを、フラットな視点で捉えることが出来る専門家が「臨床心理学者」であり、優れたプロコーチであることを、お伝えしておきます。
ここでは、「臨床心理学者」になるための勉強を始めた頃の、河合さんの正直な視点が綴られているようです。
LGBTは1990年代になって生まれた概念です。「ジェンダーバイアス」は、その国の宗教観や文化による影響が色濃く反映されますから、LGBTが共有される時代より前（日本では高度経済成長時代）の「欧米と日本のジェンダー観の違い」が描かれているとも言えそうです。
河合さんは、「友情の場合でも、心のときめきを感じたりするというのは、同性愛的と言えそうにも思われる」、と語ります。河合さんの次の言葉を引用して、今回の解説を終えることにします。
「同性愛」をどのように受けとめるかによっても、それの判定に異同が出てくるようだ。つまり、同性愛を人間の抱くいろいろな愛情のなかのひとつ、と考えているのか、それを「異常」あるいは「罪」と考えるのか、何だか「いやらしい」と感じるのか、それによって受けとめ方が変わってくるだろう。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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