（中沢）
熊楠の夢というのは、たとえば漱石の夢なんかよりずっとダイナミックですよね。漱石の夢の鬱屈の仕方とは、ぜんぜん違います。
（河合）
もっとストレートにピタッと出てくるんですね。柳田國男という人は、そういうところがなかった人でしょ。
（中沢）
ないでしょうね。あまり夢も見ないんじゃないですか。
249ページの『ブッダの夢』を取り上げ、コーチングを語り続けてきました。引用は、最後の章である「汎神論風夢理論のこね方」の246ページで交わされる対話です。ここで、柳田國男がいきなり登場します。熊楠との深い交流のあった柳田國男を語らないわけにはいかない、という河合さんの想いが、この「日本民俗学の父」につながった、ということでしょう。
柳田國男の生涯は、1875年（明治8年）～1962年（昭和37年）です。業績は「リベラルアーツ」そのものでした。現代においてもさまざまな学問領域に多大な影響を与えています。三島由紀夫など、文豪と呼ばれる多くの作家も、たくさんのインスピレーションを得て、偉大な作品群に結実させたのです。
ちなみに戦後最大の思想家と呼称される吉本隆明さんの『共同幻想論』は、吉本版『遠野物語』と、筆者は受けとめています。
南方熊楠のWikipediaに、次のような記述があります。
フランス語、イタリア語、ドイツ語、ラテン語、英語、スペイン語に長けていた他、漢文の読解力も高く、古今東西の文献を渉猟した。言動や性格が奇抜で人並み外れたものであるため、後世に数々の逸話を残している。
柳田國男から「日本人の可能性の極限」と称され、現代では「知の巨人」との評価もある。
さて、冒頭の引用に目を転じてください。中沢さんは、柳田國男は「夢を見ないのではないか…」と、言います。つまり熊楠が「夢見」によって「四次元」をも感応するのに対して、東京帝国大学法科大学→農商務省→貴族院書記官長という、高級官僚というキャリアを全うした柳田國男を、熊楠とは対極的な人物として見ているのですね。
『遠野物語』の書き出しは次の通りです。
此話はすべて遠野の人佐々木鏡石君（佐々木喜善の雅号）より聞きたり、昨明治四十二年の二月頃より始めて夜分折々訪ね来り此話をせらりしを筆記せしなり。鏡石君は話上手には非ざれども誠実なる人なり。自分も亦一字一句をも加減せず感じたるままを書きたり。……
つまり『遠野物語』は、柳田國男による「記録文学」でもあるのです。今回、これを書くにあたって『遠野物語』を再読し、そして、生成AI（Copilot）とさまざま対話を交わしてみました。その中で印象に残ったCopilot氏のコメントを紹介します。
民俗学の草分け的存在
『遠野物語』を通じて柳田は、日本の民俗学を体系化する上で重要な基盤を築きました。彼が取り組んだのは単なる聞き書きではなく、伝承の中にある文化的、社会的意義を読み解く試みでした。その結果、日常生活と神話や伝説を繋ぐ学問が新たに誕生しました。
編集と解釈の才能
鏡石から聞いた話を正確に記録するだけでなく、柳田はそれらを学術的な視点で整理し、統一性を持たせる編集力を発揮しました。彼は現実の細部を補完し、物語を深い文化的コンテキストの中で再構築する技術を持っていました。
今回の最後に、冒頭の引用に続く、「河合さんの柳田國男観」が伝わってくる「語り」を引用し、次回につなげることにします。
（河合）
見ないタイプの人でしょうね。あの人はもう現実を細かく細かく……。それが夢だったわけですね。だから、それでやっていたわけです。結局、あるといったって、ないのと同じでしょ。だから、夢でやろうが現実でやろうが同じじゃないかと、僕はこの頃思い始めているんです。……
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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