（河合）
物語というのは、どうしても今言ったように、時間軸に展開していく必要がありますが、箱庭は、すっきりひとつの絵になっている。それをもし展開したら、お話になるわけです。しかし、箱庭全体の流れがありますからね。だから、これはまた展開して、次の作品へと続く物語になっているとも言えます。
箱庭療法がうまくいっていない時は、箱庭は毎回まったく違うものになりますから、その流れをセラピストの方が読めないんです。
今回は、河合隼雄さんと中沢新一さんの対談『ブッダの夢』第3章5番目の見出し、「箱庭療法と物語の効果」を取り上げます。
引用にあるように、繰り返される毎回のセッション内容が、ぶつ切りというか、バラバラな展開になってしまう場合「うまくいっていない」と、河合さんは言います。コーチングも同様です。
さて、「流れを読めない」場合、どのように対応するのか、疑問を覚えた中沢さんは質問します。
（中沢）
そのたびごとに、少しずつ解釈をし、方向づけを与えるわけですか。
（河合）
それは絶対しないんです。
（中沢）
やっぱり以心伝心でわかってるんですか。
（河合）
どこかわかっているとこがあります。だけど、下手に言うと、方向づけをしてしまうから、たいへん危ない。少しだけ言う時もありますけど。そのへんは、かなり微妙なところです。
さて、この河合さんの回答は、コーチングと比べてどうなのか？
ここで「解釈」という言葉が登場しますが、コーチングでは用いない表現です。フロイトによる「精神分析」では、例えばデプレッションに陥っているその原因を探っていく場合、クライアントの過去の経験や感情に照準を合わせ、因果関係を見出していくのです。プロの治療者がその内容をクライアントに告げます。それが「解釈」です。
コーチングは未来志向です。クライアントが定めた未来のゴールに向かって進むプロセスに役立つ「言葉」を投げかけます。それが「フィードバック」です。
中沢さんは、フロイトの「精神分析」をイメージしているようです。河合さんは、そのことをはっきりと否定しています。河合さんが確立した「日本の箱庭療法」とコーチングに親和性が感じられますね。引用の続きです。
（中沢）
僕なんかは、せっかちだからすぐ言って、失敗するんでしょうね。
（河合）
下手に言うと失敗します。たとえば、……
ここから河合さんが、クライアントを五感で受けとめて、どのように接しているかを、丁寧に中沢さんに説明します。中沢さんはそれを受けて…「じつに根気のいる仕事ですね」と、ため息交じりの声を漏らします。中沢さんの「ため息」に、河合さんはどのように応えるのか？
ここでの見出し「箱庭療法と物語の効果」につながるやりとりを引用し、今回の解説を終えることにしましょう。
（河合）
根気というよりは感激することが多い。クライアントのほうがすごい、絶対。治療者の思いよりもはるかに超えたものが出てくるから。
たとえば、大木に女の人が抱かれているスライドを見たら、ウワッ、これはと、次、どうなるだろうと思うでしょう。
（中沢）
ドキドキしちゃいますね。
（河合）
そして次、何かと思ったら、ポーンと帽子が出て来るでしょう。
（中沢）
ホッとしたりね。
（河合）
僕は、その時は、どう超えようとしているか、わからんですよね。まだあの砂の帽子のままだったら……。次の帽子になって、帽子の上に二人が乗っているのを見たら、どうも大丈夫らしい。伴侶を見つけたらしいという感じはわかります。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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