
(中沢)
修行者だって、山の中に籠ってやっているうちはいくらでもできるんですよ。人間の心というものは面白いもので、とことんまで行けるんですね。いちばん問題なのは、やはり戻ってきたときなんです。
(河合)
そうでしょうね。
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談が収められた『ブッダの夢』、第6章「汎神風夢理論のこね方」の8番目の見出し「夢は道草」を取り上げ、コーチングを考えてみようと思います。
多くの企業は、集合研修とOJTをリンクさせてスタッフの育成に努めています。高度経済成長期には、集合研修について、人里離れた山の中の宿泊施設という閉鎖空間で、浮世離れした研修を行うこともありました。当然会社に戻るとその現実と、あまりにもかけ離れた研修(体験)との整合が取れなく、却って精神的に不安定になってしまうことも多かったのですね。
河合さんは中沢さんの言葉を受けて、現実的な(面白い)感想を言葉にします。
(河合)
それはやはりものすごく難しいことですから、森の中ではすごく素晴らしい人でも、降りてきてガタガタということもあるんじゃないですか。
(中沢)
ほとんどそうじゃないですか。それが怖いから、みんなお寺に籠っているわけです。
(河合)
もう出てこないわけですか。
(中沢)
ええ、たとえば密教修業者の人たちは、お寺の中に籠っている出家したお坊さんのことを、たしかにいろいろな戒律を守っていて偉いとは言うけれども、一方では大したことないと思っている部分があるわけです。というのは、密教修行者の人たちは日常生活をやっていますから、俗人ですから、奥さんもいるし稼がなければならない。それで、飴売りとかいろいろなことをやっているんです。けっこう、情けない商売をしている(笑)。……
ここから中沢さんは、修行者たちの「情けない」内容を、さまざま紹介します。河合さんはインスピレーションを得たようで、夏目漱石の『道草』に敷衍します。
河合さんの夏目漱石論はとても深い。<『道草』には、高い高い視点からの「目」の存在が感じられる>というタイトルを付し、この「コーチング大百科」で取り上げています。ここでも、中沢さんという同志を得て、河合さんの「自己実現」への想いが、熱く語られるのですね。中沢さんもその話に引き込まれます。
(河合)
なるほど。いい話を聞いたなあ。ちょっと話が飛ぶみたいですけど、僕は最近、漱石の『道草』(岩波文庫)をまた読み返したんです。それですごく感激したんですけど、これこそやはり自己実現の道を歩んでいると。つまり、ごく当たりまえの話が書いてあるんだけど、それをずっと見ている目があるでしょ。
(中沢)
そうそう。(中略)
僕なんか、ずっと道草をくっているようなものですからね。
(河合)
道草こそ、道をいちばんよく知るという立場なんです。道草をくっていない人は道のことなんか思っていないですよ。目的だけを思っているんです。道草する人は、道草を楽しんだり苦しんだりしているわけですから。
(中沢)
僕は河合先生を見ていてもそう思うんですけど、こういう性格の人はファンダメンタリストには絶対ならないと思います。
ファンダメンタリストは「原理主義者」と訳されます。宗教原理主義という表現もありますが、中沢さんが言わんとする意味が伝わってきますね。河合さんは柔軟そのものの人ですから。そして、河合さんのユーモアのセンスは比肩する人を見出せない(笑)。
最後に、河合さんのセンスあふれる言葉を紹介します。次回も「夢は道草」を語ってみようと思います。
(河合)
ああ、そうですね。僕らはミチクサイストというのかな(笑)。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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