『<心理療法コレクションⅤ>ユング心理学と仏教』の中の一節です。
六世紀に仏教が日本に伝来して以来、それは急激に日本にひろがりました。しかし、一般の民衆にとって、仏教はその教義や戒律、儀礼などと結びついて理解されたのではなく、それまで日本人がもっていたアニミズム的な宗教と融合し、日常生活のなかに入り込むような形で受けとめられました。したがって、仏僧も仏教の教義を教典に基づいて説く一方では、多くの説話を語ることによって、仏教の有難さを伝えようとしたのであります。(123ページ)
河合さんは『今昔物語』の一つの話を紹介します。
薬湯の出る温泉のある村に住む住人が夢を見ます。誰かが「明日の午後二時頃に観音様が温泉に来る。その人は四十歳くらいの武士です」と、夢を見ている本人に告げます。その武士の容貌や衣装などを詳しく教えてくれるのですが、そこで目が覚めます。
その住民は、村に住む人たちに夢の内容を話し、皆は温泉に集まり掃除などをして観音様を待ちます。すると、まさにその武士が馬に乗ってやってくるのです。
武士は村人が自分を観音様と崇めることを不審に思い訊ね、その訳を知ります。武士は出家して、その後に京都の比叡山に行き僧となる、という顛末です。
河合さんは、並行してユングの見た夢を紹介します。
ユングは、ハイキングの途中で小さな礼拝堂を見つけ、少し戸が開いていたので中に入ります。祭壇には聖母像も十字架もなく、代わりに美しい花が活けてあることに、ユングは驚きます。そして、祭壇の前の床の上に、私の方に向かってひとりのヨガ行者が結跏趺坐し、深い黙想にふけっているのを発見します。そして… その行者が自分であることに気づいたユングは、深いおそれのためにはっとして目覚める、という夢です。
河合さんは、この二つの夢を比較しながら、ユング心理学と出会った「私」が、西洋人の「私」と日本人(あるいは東洋人)の「私」との違いに思い至る、その洞察を語ります。
『今昔物語』の僧になった武士は、自分のあずかり知らぬところで、他者により「観音様」と同一化しています。そのことを武士は受容して“しまいます”。他者との一体化です。
河合さんが思想として提起する「日本文化の中空構造」を彷彿とさせる内容といえるかもしれません。
ここでユングは自らの夢の体験を東洋に近似するものとして認めています。これらのことから考えると、西洋近代と日本の中世の両方にまたがってユングの「私」が存在しているような感じを受けます。「私」とは何かを考えるとき、西洋の近代においては、西洋人のegoを「私」と同定するほどに考えていました。それに疑問を感じたユングは、egoから出発して、もっと心の深みに降りてゆこうとしました。
これに対して、日本の中世の人の「私」は、他との区別もほとんどなく、自らも他も融合しているほどの存在として受けとめられていたのですが、現代の日本人……たとえば私のような……が、そこから、もっと個別性を感じさせる「私」を求めて上昇してきたとき、ユング心理学という領域において、西洋と出会ったのです。ユング心理学はきわめて深く広いものですが、それを受けとめる際に、西洋人が自我との関連において理解しようとするのに対して、日本人(あるいは東洋人)は、自他分離以前の存在との関連において理解しようとする、と私は感じています。(127ページ)
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.